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フクロ小説スレ

1 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/09/24(日) 18:19:49 ID:1LNZa/Q2
小説書こうぜ!

250 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:36 ID:0B8U7vGE
どうやら本当らしい。
僕が布団の中でその結論を出したのはフクロ荘に来て十日目のことだった。

ミコネコさんが辿り着いた結論が本当であるかは分からない。
又さんと僕に嘘を吹き込んでいるかもしれない。
しかし、それが偽りであるとは思えなかった。

僕の薄弱な人生経験でもそう感じたのだ。
いや、薄弱だからそう感じたのかもしれないが…
とにかくそう感じたのだ。

決定的なのはハズカシさんの話だ。
彼がどれほどこのフクロ荘にいるのかは分からない。
しかしこの土地を知っているということを考えると、ある程度は過ごしているのだろう。
だとすれば、やはり彼はこの土地の人ということになる。
その土地の人が存在を知っているのであれば、やはりそれは本当だろう。

ミコネコさんも又さんもハズカシさんも僕をからかっていると思いたかった。
だが、その願望は願望でしかなく、現実は覆されなかった。

251 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:45 ID:0B8U7vGE
日時を示すぐらいしか役目を持たなくなった携帯電話は、
僕の不安な心とは無関係に「4:05」と無機質に時間を教えてくれた。
この結果は昨日から一睡もできず、”黒い噂”について考えたことによっている。

恐らく、いや確実に本当なのだろう。
文明化が進む場所と隔絶されたこの場所にはあってもおかしくない。
恐怖が僕を包み込んだ。

気が付くと空が明るかった。
布団から這いだし、窓から海を見る。
船が数艘見えた以外に何も変化はなかった。

道路に目をやると黒塗りの車が見えた。

252 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:57 ID:0B8U7vGE
同時に違和感が生まれた。
こんな時間に、こんな辺鄙な場所に、車が通るのはまずあり得ないことなのだ。
”黒い噂”のせいで疑心暗鬼になっているせいなのか、そう思った。

車は漁港近くに止まった。
この土地に用があるのだろうか。
ますます不安が煽られた。

静寂を打ち破り、電子音が響いた。
それは小さなものであったが、僕にとっては打ち破るような音であった。
音は僕の部屋からしているものではない。

畳の下だ。この下は1-3、arikiさんの部屋だ。
電子音は携帯電話の音だったようだ。
音は中途半端に途切れた。

253 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:06 ID:0B8U7vGE
部屋の中央に戻り、耳を澄ましてみた。
他人の話を聞くのは良くないことであることは知っている。
だが、とにかく不安を取り除きたいがためにしてしまった。

話を聞くことはできなかった。
arikiさんの声が聞くには小さすぎたのだ。
早朝であるから当然といえば当然である。

しばらくそのまま耳を澄ましていたが、突然ドアの開く音がした。
その音もarikiさんの部屋からであったのだろう。

254 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:19 ID:0B8U7vGE
来客なのだろうか、それとも外出なのだろうか。
疑問に思いつつしばらく考えを巡らしていると、窓から玄関の開く音がした。

そっと覗くとarikiさんの姿が見えた。
視線の先は坂を下り、道路を渡り、そして黒塗りの車の元へ辿り着いた。

arikiさんは車の助手席側に乗り込んだ。
車は発車することなく、そのままであった。

一体何が車の中で行われているのだろうか。
頭の中で”黒い噂”と関連した妄想がぐるぐると渦巻いた。

255 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:29 ID:0B8U7vGE
しばらくぼんやりと車を見ていたのがまずかったのだろうか。
突然arikiさんが助手席から降りた。
乱暴にドアは閉められ、僕の耳にもその音が届いた。

そして一瞬の後、彼の視線はフクロ荘の2-3号室に向いた。
まずい。と僕は思ったが、それは彼も同じだったようだ。
彼は恥ずかしそうに頭を撫でた。そしてこちらへ歩き始めた。

慌てて僕は窓から離れた。
窓からは車の離れる音がした。

256 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:46 ID:0B8U7vGE
彼はフクロ荘に戻ってくる。
車が去ったということで確定的になったその事項は僕を震え上がらせた。
ただ、彼がフクロ荘に戻ってくるということが重圧に感じた。

”黒い噂”のせいで疑心暗鬼になっている僕には、
ちょっとした非日常の出来事が、恐ろしく感じていたのだ。

携帯電話は変わらず無機質に時を重ねている。
それと同時に僕の心の圧迫も重い物となっていった。

刻一刻、刻一刻と迫ってくるその時まで自分は何をすることもできなかった。

257 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:55 ID:0B8U7vGE
「nt君。いるかい」

その声はドアの向こうからした。
arikiさんだった。
返答に詰まったが答えない訳にはいかない。

「あ、はい…」
「ちょっと話があるんだ。開けてくれないか。」

いつものarikiさんの声ではあるが、どことなく畏まっている。
何かあるのだろう。
何も聞かず不安になるよりは、正体を見極めた方がいいだろうと思い、ドアを開けた。

258 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:07 ID:0B8U7vGE
「どうも。いやぁ、まずいところを見られちゃったね」
「…何かあったんですか?」
「ん…まぁ、ね。ちょっと長い話になるがちょっと上がらせて貰っていいかい」
「はい」

机を挟んで僕とarikiさんは対面した。

「もう気が付いているかもしれないが…」

arikiさんはそう話し始めた。
僕はドキリとしたが顔には出さないようにした。

259 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:28 ID:0B8U7vGE
「俺は元々はバスの運転手でなく、漁師をやっていたんだ。しばらく前まではな」
「はぁ」
「ところがある時”葦富賂株式会社”からこの土地の買収の話が持ち上がったんだ」
「それが何か関係しているんですか?」

葦富賂株式会社は様々な分野に手を広げ、近頃飛躍を遂げている企業だ。
賄賂であるとか汚職であるとかそういう言葉が付きまとう企業でもあるのだが。

「あぁ、だがその理由は話の先の方になる。
 で、それっていうのはこの土地を買収して、ここ一帯を大型リゾート地にするという計画だ」
「…」

確かにここの海は綺麗だし、そういった計画が起きても不思議ではない気がする。

「だがそんなことをしたら、ここの住人は住む場所をなくしてしまう。
 だから俺たちは反対運動を行ったんだ。だが、あいつらは酷い手段を使いやがった」
「酷い手段…ですか?」
「あぁ。ヤクザを送り込んで嫌がらせに来やがった
 店は荒らされ、家はガラスが割られ、当然ここも暴力被害にあった」
「警察は何もしてくれなかったんですか?」
「何もしてくれなかったさ。葦富賂株式会社は警察の上部とも繋がりを持っているらしい」

260 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:43 ID:0B8U7vGE
「でも、今はそんなことが起こっていませんよね」
「あぁ、それが今俺がバスの運転手をやっている理由に繋がってくる。
 俺はその計画を担当していた社員にまとまった金を渡した。
 それで計画を立ち消えにさせたのさ」
「…」
「卑怯な奴らには卑怯な手段がお似合いさ」

自嘲気味にarikiさんは笑った。
その笑いには寂しさが含まれているように感じた。

「でもそんな金がどこにあったんですか?」
「漁船を売っ払ったのさ。やや古いもんではあったが手入れは欠かさなかったからな。
 それなりの値で売れたよ。」
「そこまでして…」
「ここの住人にはここしか住む場所がないのさ。
 それで俺はバスの運転手をやりはじめたんだ」
「はぁ…でもいきなりどうしてそんな話を?」
「…あの社員が今日の早朝、俺に連絡してきたのさ。
 『計画がまた立ち上がった。話をして欲しければ漁港まで来い』とな…」

消えゆくような声でarikiさんはそう話した。

261 :◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:55 ID:0B8U7vGE
ここまで

262 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2009/02/24(火) 12:39:16 ID:UuDDW7vo
おやレスがたくさんついているなと思ったらなんですか(ry
久しぶりすぎてまた最初から読み直してしまった件

263 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2009/07/22(水) 08:29:23 ID:b0HqCZH2
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(' -')http://www15.atwiki.jp/fukurofantasy/(' -')
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0ch BBS 2007-01-24