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フクロ小説スレ

1 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/09/24(日) 18:19:49 ID:1LNZa/Q2
小説書こうぜ!

101 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/07(土) 19:24:27 ID:rS3OUSFs
>>96
突き刺さった視線がさらには突き抜けてしまうという言葉遊びだと思う

102 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/08(日) 19:24:08 ID:vlqC109E
諸事情で投下は遅れます。

103 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/08(日) 19:53:19 ID:TQHxm+i6
報告サンクス
気長に待ちますノシ

104 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:24:30 ID:cnEedG5o


           __
           __ つ の

        个_.┐
        艮ロ| い た い ん で す が ・ ・ ・


                   _
               _{ニ}_〉 ハ奥l_
               (- ゚ |::〉(*゚ -゚)
               (  っc  ),
                し`J し`J


105 :アブ(=゚口゚)さん1/4 ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:26:00 ID:cnEedG5o
少しだけ暑さが残った感じだけど
湿り気を持たない風はとても心地よかった。

家にいてもとくに2ch以外やることがなかったので
久しぶりに散歩をしに外へ出てみた。
僕の名前はnt。ごく普通の、ごく平均的な大学生。

もうこの町に来てから半年は経っただろうに
こうやって散歩をしてみると新しい発見が沢山ある。
家に籠もっていては決して見つからない発見が。
結構な都会に来たなーと思っていたのに
少し道を外れるだけでそこはもう故郷の田舎と変わらなかった。
人通りのない寂れた町並み。
ちょっと錆びたベランダに干してある洗濯物。
色褪せた壁を持つ建物。
何となくタイムスリップしたようなノスタルジイな気分にさせてくれる。

こっちには何があるのかなと年甲斐もなくウキウキしていた僕は
路地に小さな露店があるのを見つけた。


106 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:26:45 ID:cnEedG5o

露店…というのは間違いかもしれない。
そこにはダンボールから顔を出した一匹の子猫と、
頭にバンダナを巻いた中年の男が木の椅子に座っているだけだった。
一応後ろには張り紙らしきものがあるが…電信柱が邪魔で読めない。

中年の男はこちらに気付いていないようで別の方向を向いていた。
僕はじっとこっちを見つめている子猫に近づいてみた。
子猫は頭に不釣り合いな軍帽を被っている。

あれ?

僕はこの子を昔見たことがあるような気がする。
確か…もっと大きかったような気がするけど…
あ、思い出した。

「おじさん、これって…」
おじさんはこちらに気付いたらしく振り返った。
「ん?おや、いらっしゃい。カッカに興味があるのかい?」

やっぱりか。


107 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:27:28 ID:cnEedG5o

「やっぱりあの山奥閣下なんですか?」
「ああ、そうさ。と言ってもコピペなんだけどな。
 俺はここで"コテペット"を売ってるんだ。」
…成る程、確かにさっきまで見えなかった張り紙には"カッカ 500エン"と書いてある。
「本当は女性専門で"←"ってペットを扱ってるんだがな。
 ちょっと前に全部売り切れちゃってなかなか市場に出回らないんだ。
 それで代わりにしばらくカッカも扱ってみようかなってな。」
おじさんは頭をぽりぽり掻きながら説明してくれた。

僕は少し屈んで閣下の目線に合わせてみた。
僕がドクオ体型であるせいか子猫と言っても僕より少し小さいくらいだ。
「閣下かぁ、…そういえば僕も昔閣下に憧れてたなぁ。
 もっとも僕がAA書き始めた頃にはとっくに引退してたけどね。」
少し自嘲気味の笑みを閣下に投げかけたが
相変わらず閣下は僕の方を何も言わずじっと見つめている。

「飼ってみたいかい?」
おじさんが不意に訪ねてきた。
「え?…えーと」
「カッカってのはちょいとプライドが高くてなかなかシャイだがな。
 その分懐いた相手には忠誠を尽くしてくれるし…
 その上賢いから教えてやれば殆どのことはこなすぞ。」
突然の質問にびっくりしていた僕におじさんは続けてそう言った。


108 :アブ(=゚口゚)さん4/4 ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:28:10 ID:cnEedG5o

「うーん、そうですねぇ…」
とりあえず語尾を濁し考える時間を得て、
おじさんに話しかけられ逸らしてしまった顔を再び閣下に向けた。

昔僕が憧れていた閣下。それがコピペとはいえ目の前にいる。
憧れていたものを逆に自らの手中に置きたいという支配欲…といったら完璧に言いすぎだが
それに近くて…でも限りなく遠い感情が僕の中に芽生えた。

「おじさん、この子を飼ってもいいですか?」
気付いたら僕はそう言っていた。
「お、飼ってくれるかい?毎度あり!」
おじさんはとても営業トークには見えない、心から嬉しそうな顔をしてそう答えた。

「カッカ、僕が君の飼い主だよ。よろしく!」
おじさんに500円を渡した僕は、おじさんに負けないくらいの笑みでカッカに語りかけた。
「………」
やっぱりカッカは何も言わず、でも少し怠そうにダンボールの中から出てきてくれた。
こうやって並んでみると、カッカは本当に僕より少し小さいくらいで殆ど変わらない。
いや、ドクオ体型の僕が小さすぎるせいでもあるんだけど。

「それじゃー、頑張れよー!」
帰り際おじさんが手を振って見送ってくれた。
僕も負けじと振り返した。
帰りは元来た道をカッカと手を繋いで帰ってみた。
身長差があまりないせいか少しだけ恥ずかしかったけど、
けど何だか嬉しかった。


109 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/09(月) 20:28:56 ID:cnEedG5o
今回はグロくもエロくもありませんが
物語が進むにつれヤバくなると思います。

そういうのが苦手な方は自分のトリか臨時にコテを付けたので
それをNGワードにしてください。

110 :五日目:2006/10/09(月) 21:08:48 ID:frNoqYeQ
しばらく休んでから僕たちはまた海に向かった。
ハズカシさんは『もう帰る。』と言い、とぼとぼと坂道を登っていった。
その背中には哀愁が漂っていた。

「やっと危険は去ったみたいだな。」

sdsさんは彼を見送りながらそう言った。
確かに女性陣は安心して遊べるだろう。

「sdsさんも水着買えばいいのにね。」
「せっかく海の近くに住んでいるのに勿体ないですよね。」

浮き輪にしがみつきながら又さんと会話をする。
太陽の暖かさと海の冷たさが心地よい。

「……もしかして泳げなかったりして。」
「かもね。」

勝手な想像をして二人で笑う。
泳がない――泳げない本当の理由も知らずに。

111 :五日目:2006/10/09(月) 21:09:15 ID:frNoqYeQ
道路の方を見るとバスが来ていた。
確かあれはarikiさんのバスだ。
しばらく見ていると閣下さんがバスの中から現れた。
手にはスイカをぶら下げている。

「あ、閣下さんだ。」
「バイト終わったんですね。きっと。」

sdsさんが閣下さんに気づき声を掛ける。

「バイトお疲れ様。」
「大したこと無いさ。
 それよりスイカ買ってきたから皆で食べようか。」
「あ、ありがとうございます。」

僕ら四人以外には誰もいない海辺だ。
会話は僕たちの所へも聞こえた。

「じゃあ行きましょうか!」
「そうだね。」

僕たちは浜へ向かっ泳ぎ始めた。

112 :五日目:2006/10/09(月) 21:09:28 ID:frNoqYeQ
「……っ!」

又さんは詰まった声を出し、その場でもがき始めた。
足をつってしまったのだ。

「だ…大丈夫ですか!落ち着いて!!」

落ち着いてと言う自分も落ち着いてなどはいない。
ただ僕に出来た事は手を差し伸べただけだった。

又さんは僕の手を掴んだ。
それと同時に僕もバランスを失った。

「がばっ……」

顔を海面に突っ込んでしまい気管に海水が入り込む。
助けようとしてこの様だ。

113 :五日目:2006/10/09(月) 21:09:42 ID:frNoqYeQ
又さんは僕の手を掴み必死でいる。
僕は海水を変に飲み込んでしまい息が不自由になっている。
その場で僕たち二人は藻掻き苦しみどうしようもできなかった。

その様子に気付いてくれたのか、
閣下さんは服を脱ぎ下着のままでこちらへ泳ぎはじめた。

「大丈夫か!」

返事をしようにもこの状態ではどうしようもない。
さらに僕の手に掴む又さんの手の力は弱まってきていた。

閣下さんは又さんを僕から引き離した。
既に又さんはぐったりしている。

「nt君!君は泳げるな!?」
「は…はい!」

そう言うと閣下さんは又さんを引っ張るように浜へ泳いでいった。

114 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/09(月) 21:09:59 ID:frNoqYeQ
ここまでダブダブ

115 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/09(月) 21:17:34 ID:KvspiMP+
ダブゥ!?

116 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/09(月) 21:23:14 ID:frNoqYeQ
ダブブゥ!ダブダブブゥ!
ダーブゥー!

ノシ

117 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/09(月) 22:03:15 ID:jv5lcaNU
( *゙∀゙)ダブダブ

118 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/10(火) 16:46:41 ID:oFFWEB7+
>>109
さっすが旦那!投下待ってたぜ!
ダブダブ!

>>114
ダブダブ!

119 :五日目:2006/10/10(火) 20:49:42 ID:JIEBkEKY


陸に上がった僕たちは又さんを浜に寝かせた。

「だいぶ海水を飲んでいるみたいですね……」
「顔色も悪い。このままでは……」

この漁村には病院も診療所さえもなく、
病院は隣町までいかなくてはならないのだ。

閣下さんが言った。

「時間がない。人工呼吸をするぞ。」
「できるんですか?」
「……いや、見様見真似だ。」
「じゃ…じゃあ僕は管理人さんに伝えてくる!」

sdsさんはフクロ荘へと走っていった。
閣下さんは気道を確保できるよう、
又さんの首を曲げ息を吹き込み始めた。
僕はただ何もできずにただそれを見守っていた。

120 :五日目:2006/10/10(火) 20:50:00 ID:JIEBkEKY


「ごほっ!」

又さんの口から結構な量の水が排出された。
それと同時に又さんの意識が回復した。

「……ケホッ…………私は……」
「海水を飲んで意識を失っていたんだよ。」
「そうですか……ありがとうございます……ゴホッ」
「疲れただろう。とりあえず日陰で横になってな。」
「ケホッ……そうします。」

閣下さんは凄い人だ。
人のためにこんなにも一生懸命にできる。
もし閣下さんがいなかったら又さんはどうなっていたことだろう。
僕は何もできなかった。無力だった。

121 :五日目:2006/10/10(火) 20:50:14 ID:JIEBkEKY
「大丈夫ですか!?」

sdsさんが管理人さんを連れてきた。
例の危険生物さんもついてきていた。

「あぁ。たった今意識を取り戻して安静にしているところだ。」
「はい。この通り助かりました。
 どうもすいません……迷惑をかけてしまって……」
「無事でなによりさ。」

とにかく助かったのだから良いということにしておいた。
自分の無力さを隠すために。

122 :五日目:2006/10/10(火) 20:50:26 ID:JIEBkEKY

「ところでどうしてそんな格好なんだい?」

危険生物さんが危険な顔つきで閣下さんを見つめた。

「!!……いや……これは……その……
 まだ水着に着替えてない時に又ちゃんが溺れていたから……」

やっと気付いたことなのだがで水に濡れた
下着のままの閣下さんの格好は確かに性的な魅力があった。

「僕はそのままでもいいと思うよ。」

変態である。
それがその時の率直な考えだった。

123 :五日目:2006/10/10(火) 20:52:09 ID:JIEBkEKY
「ちょっとこの人連れて行きますんで……」
「あ…あぁ……頼む。」
「あぁー……」

閣下さんは赤面しながら答えた。
僕はハズカシさんを引きずり浜を後にした。
道路に差し掛かる頃、ハズカシさんの声が村中に響いた。

「ちょっ……ちゃんと歩くから!歩くから!
 道路は!道路はやめて!皮膚が剥けてしまう!!」
「本当ですか?」
「本当だって!」

その言葉を信用し手を離す。
途端に彼は危険生物となり浜に向かって走り出した。

「あ!!」

危険生物は閣下さんの元へと走る。
10m、5m、1m。


そしてその一瞬後。
危険生物の顔面には閣下さんの拳がめり込んでいた。

124 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/10(火) 20:52:29 ID:JIEBkEKY
ここまでダブゥ。

125 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/10(火) 20:56:57 ID:AnEBTogA
乙ダブゥ

126 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:50:28 ID:vh18DeeA
危険生物はゆっくりと砂浜に倒れ込んだ。

「全く……」
「効いたぜ……あんたのパンチ……」
「まだ息があったか。」
「グェッ!」

閣下さんは足で背中を思い切り踏んだ。
同時に人間と思えないような声でハズカシさんは気絶した。

「とりあえずヌルさんの所に行ってシャワーを使わせてもらう事にするよ。」
「いってらっしゃい。」
「スイカは食べてていいよ。それじゃ。」
「あ、私も戻らないと……じゃあね。」

閣下さんはスイカを置いて銭湯に向かい、
showさんはフクロ荘へと戻っていった。

ヌルさんというのは恐らく銭湯の人のことなのだろう。

127 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:50:52 ID:vh18DeeA
「閣下さんはああ言ってましたけど待っていた方がいいですよね。」
「そうですね。折角ですからみんなで食べましょう。」

僕たちはビーチパラソルの日陰で待つことにした。
さっきの事で慌てていたが、大分落ち着いてきた。
今無事でいられたのは閣下さんのおかげだ。

「あの……」

又さんが話しかけてきた。

「ん?何?」
「さっきはどうもありがとうございました。
 おかげで助かりました。」
「いやぁ、僕は何もできなかったよ。お礼は閣下さんにいうべきだよ。」
「でもntさんが居なかったらあの時すぐに溺れていました。
 ntさんが私に手を伸ばしてくれたから助かったんです。」

驚いた。自分はただ手を伸ばしただけ、と考えていたのに、
又さんはそれをとても感謝してくれている。
自分が情けないと思っていたことがその時恥ずかしく思えた。

128 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:51:12 ID:vh18DeeA
「いや。そんな。無我夢中だったんでよく覚えていません。」

とりあえず軽く笑ってその場をごまかした。

「だけどntさんのおかげです。今度きっとお礼をしますね。」
「そんな。別にいいですよ。」
「いえ、是非。」
「こういう時は『はい』って言うものだよnt君。」

sdsさんが微笑みながら話しかけてきた。

「えっ。あ。そういうものなんですか。」
「そうだとも。恩は誰だってちゃんと返したいものさ。」
「はい!是非お礼をさせて下さい。」
「じゃあ楽しみにしてるよ。」

129 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:51:30 ID:vh18DeeA
しばらくすると閣下さんが帰ってきた。
活発な服を着ている。

「あれ?まだ食べてなかったのか?」
「やっぱりみんなで食べた方がいいですよ。」
「そりゃ、どうも。じゃ、早速食べようか。」
「でも切る物がないですよ?」

確かにスイカを切れるような物はない。
となるとやはり……

「砂浜でスイカと言ったらアレしかないだろ?」
「アレですか。」
「そう!スイカ割りだ!」

スイカ割りは初めてだ。
海に行くことさえ希だった僕はスイカ割りをしたことがなかった。
いや、よく行ったとしても友達が近くにいない僕には無理な話だった。

130 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:51:48 ID:vh18DeeA
「よーし!じゃあまずnt君からだ!!」
「え、僕ですか?」
「当然!お客さんにはサービスするものさ!」

閣下さんは妙にハイテンションになっている。
みんなで盛り上がれるゲームというのはやはり楽しい。

僕は目隠しをしてスイカに向かって歩き始めた。
みんなの声を聞きながらスイカの位置を想像する。
止まった位置は最初に見えていたスイカの位置とは、
大分違うように感じられた。

「ここかな?」
「そうだ!そこを思いっきり叩くんだ!」
「よーし!えいっ!」

ばすっ

持っていた棒はスイカに当たってなかったようだ。
いや、スイカに当たるはずがなかったのだ。

131 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:52:32 ID:vh18DeeA
「あー惜しいなぁ……」

閣下さんの声が後ろの方で聞こえた。

「どんな感じだったんだろうなぁ……」

目隠しをとるとそこにはハズカシさんが横たわっていた。
危うくハズカシさんを叩いてしまうところだった。
この人は女性の恨みをどれだけかっているのだろうか。

「……危なかった……」
「いや、叩いても問題はないよ。」
「うん。」
「残念です。」
「……そうですか…………」

……本当に何をしたらここまで嫌われるのだろうか。

132 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/11(水) 20:52:56 ID:vh18DeeA
ここmダブゥ

133 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/11(水) 23:19:49 ID:5a4Bonuk
乙!
閣下ヒドスww

134 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/12(木) 00:08:03 ID:5NcMSUqA
ナイスです><

135 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:22:20 ID:ryqa16oA
「なんでそんなにハズカシさんが嫌いなんですか?」

やっぱり気になるので聞いてしまった。

「いや、普段から色々と問題行動してるんだよ。」
「脱衣所に侵入したり、部屋に勝手に入って来たり。」
「……ひどいですね。色々と。」

なるほど、それは嫌われるはずだ。

「人の物を漁ったりするからね。評判はあんまりよくない。」
「でも、何故か憎めないんですよね。」
「あー。なんていうか子供っぽいというか純粋というか…」
「嫌いというより面白い変態って感じかな。」
「はぁ……」

それはフォローになっていない気がしたが、
当の本人が気絶しているので問題にしなかった。

136 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:22:42 ID:ryqa16oA
スイカ割りはsdsさんが締めくくってくれた。
スイカは綺麗に割れ、僕たちはそれを食べた。
勿論ハズカシさんは気絶しているので食べなかったのだが。

「さて、一泳ぎしてくるかな。」

しばらくして閣下さんは服を脱ぎ水着姿になった。
水着が体のラインを強調している。

「みんなはどうする?」
「もうちょっと休んでからにします。」
「んー。私も。」
「僕は本でも読んでるよ。」
「そっか。じゃ、行ってくる。」

閣下さんは海に入り泳ぎだした。
泳ぎの素人の僕が見ても綺麗なフォームだ。
僕はしばらく閣下さんに見とれていた。

137 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:23:12 ID:ryqa16oA
「私たちも泳ぎにいきましょうか。」
「あ、うん。そうだね。」
「行ってらっしゃい。」

又さんに促され僕たちは海に向かった。
日が沈まりかけていて海が赤く染まりはじめた。

「じゃあ競争でもしようか。」
「はい!」
「負けないぞ。」

三人で海を泳ぐ。
浜の方を見るとsdsさんがこっちを見ていた。

どことなく寂しげな目だった。

138 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:23:29 ID:ryqa16oA
僕たちは泳ぎ終わり帰りの準備をしていた。


「ううーん……」

その時、ハズカシさんが上体を起こした。

「あ、気がつきましたか?」
「やぁ、nt君。なんだか長い夢を見ていたようだ。」

それも当然だ。もうそろそろ4時になる頃である。
ハズカシさんはよろりと立ち上がった。
まだダメージが残っているようだ。

「顔、大丈夫ですか?」
「うん。多分大丈夫。それより写真は?」
「頭、大丈夫ですか?」
「……ごめんなさい…………」
「分かればいいんです。」

この人は本当に全く懲りない。

139 :五日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:23:45 ID:ryqa16oA
「じゃ、帰ろうか。」

僕がハズカシさんと話している間に片付けは終わってしまったようだ。

「僕が持ちますよ。」
「いや、いいよ。ハズカシ君に持たせるから。」
「ひどい。」
「もう一発ぶち込もうか?」
「持たせてください。」

閣下さんは男勝りだ。
僕にできないようなことも平気でやってのける。

道路を渡り、坂を登り始める。
僕らの前方には夕焼けによってできた影が長く伸びている。
振り返るとそこには赤く染まった海原と大きく、美しい夕日があった。

その時、僕は自分の非力さをまじまじと感じた。

140 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/14(土) 20:24:27 ID:ryqa16oA
これで五日目は終わりです。
伏線が全て解消できるか不安だ。

141 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/15(日) 17:31:59 ID:0fFOpWFE
おーGJ!

142 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/16(月) 20:43:47 ID:OSrLY7Zw
7時ちょうどのこと。
僕はけたたましい目覚まし時計の音で目覚めた。

朝にしては心なしか暗く感じた。
窓から外を見ると、大きく育った暗雲が立ちこめていた。

「なんか雨降りそうだな……」

ぼそっと呟きながら布団を畳む。
今日は出かける予定はない。
外に出る必要はないのに、雨が降るだけで不快な気分になる。
雨という名のモノは人を冷たく打つからだろうか。

「卒論でも書くかな……」

食事の時間は7:30からだ。まだ25分ほどある。
少しは卒論を進めることができるだろう。

143 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/16(月) 20:44:03 ID:OSrLY7Zw
僕は机に向かった。
机には昨日と同じままの状態で原稿が置いてあった。

「さて……と。」

鉛筆を持ち書き始める。
だが寝起きの頭で、さらに雨で気が沈んでいる状態で
良い文を書けるわけではない。

「……こりゃだめだな。」

見切りをつけ、僕は台所へ向かった。
管理人さんの手伝いをするためだ。
一人で進まない卒論を書くよりはこっちの方が遙かに有意義というものだ。

144 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/16(月) 20:44:20 ID:OSrLY7Zw
台所へ行くと既にsdsさんが手伝いに来ていた。
みそ汁のおいしそうな匂いがした。

「おはようございます。手伝いに来ました。」
「あ、おはよっ。」
「おはようございます。
 じゃあ、すいませんけど配膳お願いしますね。」

ジャーが二つある。
9人分の食事だ。一つではやはり足りないのだろう。

お椀にご飯を盛り机に並べていく。
単純な仕事なのだが9人分は確かに面倒くさくなる。

「毎日大変ですね。食事の準備。」
「いえ、でも皆さんが手伝ってくれますから助かってます。」
「そうですか。」

大変な仕事なのに管理人さんは前向きだ。
というのも住人の皆の支えがあるからなのだろう。

145 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/16(月) 20:44:39 ID:OSrLY7Zw
「食事の準備ができたからみんなを呼びましょうか。」
「じゃ、僕は二階の人達を呼んできますね。」
「お願いします。」

僕は台所を出て階段を上がる。
気がつくと僕の部屋は開いたままだった。

「開けっ放しにしてたのか……」

ドアを覗くと部屋の中にハズカシさんがいた。
ハズカシさんは僕に気がつくと話しかけてきた。

「あ、nt君!ちょっと用があるんだけど!」
「その前に勝手に人の部屋に入らないで下さいよ……」

この人は色々と無茶苦茶である。

「まぁいいじゃないか。それよりこれを閣下さんに返してくれないか?」

その手にはビニール袋があった。
中には何かが入っている。

146 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/16(月) 20:45:02 ID:OSrLY7Zw
「なんですか?これ。」
「閣下さんの下着だよ。」
「え……」

目が点になった。

「待て待て、早合点するな!
 外に干してあったのが雨に濡れるといけないから取り込んでおいたんだ!」
「……本当ですか?」
「本当だって!何なんだその目は!」

僕はそんな目をしていないつもりだったのだが、
よほど自分でも分かっていたのだろう、
僕の目はかなりの軽蔑の眼差しに見えたのかもしれない。

「で、なんで僕に返させようと?」
「こういうのは僕が返すと……」
「分かりました。もう言わなくてもいいです。」
「そ……そうか。」

ハズカシさんは少し残念そうな顔をした。
自分がどういう人物と思われているかを理解したらしい。

147 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/17(火) 16:17:24 ID:ygon1FAM
GJ!
何やってんだハズカシwww

148 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/17(火) 21:26:24 ID:V5Pgf8LU

ntの青年にカッカを売った時、日はまだ東の方にあったが
今の日はもう西の空から自分を照らしている。

「…遅いな。」
頭にバンダナを巻いた中年男…ハズカシは
少し肌に滲んだ汗を拭きながらそう思った。

約束の時間はとうに過ぎている。
元々相手は約束を時間内に守るようなヤツじゃなかったが
客である以上ある程度はワガママも聞かなければならない。
しかし…こんな仕事引き受けるんじゃなかったと後悔した。

「…ふぅ、この子も寝てしまったか。」
ハズカシはダンボールに向かって呟いた。
カッカの入っていたダンボール、しかし空ではなかった。
どうやらntは気が付かなかったがもう一匹入っていたらしい。

その子はカッカとはまた違う、両端に布の付いた軍帽を被り
箱の中で丸くなって小さく寝息を立てていた。
純粋な、ケガレのない顔で寝ているその子の未来を考えると
ハズカシの胸は痛んだ。

(ヤッパリ引キ受ケルンジャナカッタ。)


149 :◆CSUREPjKx. :2006/10/17(火) 21:27:00 ID:V5Pgf8LU

ハズカシがぼーっと前を見ていると、向こうから人影が
こちらに向かって来るのが見えた。
「…来たか。」
ハズカシはそう呟くと目を険しくし、相手が来るのに臨んだ。

その男は左の耳に「2o」という形のイアリングを付けていた。
男の瞳は濁った青色をしていて口元には小さな笑みを浮かべている。
その顔は整った顔でありながらどことなく狂気に満ちており、
ダンボールの中で寝ている子のそれとは全く正反対だった。

「よ、ハズカシ待たせたな。」
男はハズカシの前に立ち見下しながら口を開いた。
あまりに普通の口調に返って笑みが不気味だ。
「例の"モノ"は用意出来たんだろうな?」
続けて男は言った。モノ…という言葉にハズカシの眉間が少し動いた。

「…ああ、用意したぜ2o。ダンボールの中を見てみろ。」
ntと話したときとは違う。あまりに低いトーンでハズカシは喋った。
2oはそれを聞くとゆっくりとダンボールの方に身体を向けた。
落ち着いている…というよりははやる気を抑えてといった感じだ。


150 :◆CSUREPjKx. :2006/10/17(火) 21:27:18 ID:V5Pgf8LU

箱の中で寝ている子を見つけた2oの濁った目は、一瞬だけ光を取り戻したように見えた。
その光はあまりに邪なものだったが。

箱の中のその子は2oの存在に全く気付かず、未だに目を閉じ眠っていた。
2oは自身の高鳴る感情に堪えきれずククッと声を漏らした。

「…子供のsds、それも未調教のもの。これでいいんだよな?」
ハズカシは2oの方を向かず、あさっての方向を向きながら言った。
「ああ、間違いないぜ。お前に任せたから不安だったが、なかなかの上玉じゃねえか。」
「ふん、そいつは良かったな。だったら早くオーダー料含めて一万五千。払って貰おうか。」
話なんざしたくない、といった様子でハズカシは早口で言った。

2oはハズカシの方を向き直すと懐から二枚のお札を出して言った。
「ほらよ一万五千円だ。受け取りな。」
ハズカシはチラリとだけ2oの方を見て何も言わずお札を受け取った。

「しっかし、あれだな。」
2oはそこで一旦切り、続けて言った。
「普段←みたいな性具ペットを売ってるお前が
 俺に対しちゃやけに冷たいじゃないか。商売に差別はいけないぜ?」
2oの笑みには軽く嘲笑の意が含まれていた。


151 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/17(火) 21:28:35 ID:V5Pgf8LU

「…お前にsdsを預けるのが心配なんだよ。昔っからお前は女を物としか扱ってなかった。
 いくらお前がイケメンでモテたからってな。率直に言えばお前が嫌いなんだよ。ただの私怨さ。」
2oの方を振り向いたハズカシの口調は明らかに興奮し、その口から様々な言葉が飛び出した。
その言葉は段々短くなり、そしてハズカシの真意に近づいていった。

「ふん…、やっぱただの童貞の僻みか。
 だったら最初から売らなきゃ良かったんじゃねーの?」
「だから今後悔してるんだよ!ああもう、何処かへ行ってくれ!」
それ以上言い返せなくなったハズカシは半ば逆ギレしたように答えた。

「はいはい。じゃーな。」
2oはそう言うと箱の中からsdsを抱き上げた。
sdsは余程よく眠っているのか全く起きそうにない。

…しばらくハズカシは唇をぐっと噛み締め2oの去っていく様を見守っていたが
ふいに"おい"と2oに声をかけた。

「何だ?童貞。」
2oは振り返り答えた。
「…2o。その子は生き物だ。モノじゃない。時間が経てば腹も減るし眠くもなる。
 まだ子供だから遊びたい盛りでもある。それを分かってやってくれ。」

「"遊びたい盛り"…か。ケケケ分かったぜ。」
ハズカシの必死の言葉も2oには歪んで聞こえてしまった。
2oの目の中は汚れた感情で渦巻いていた。


152 :アブ(=゚口゚)さん ◆CSUREPjKx. :2006/10/17(火) 21:29:16 ID:V5Pgf8LU













暗い…ここ何処だろう。お兄ちゃん誰?
ハズカシのおじさんは?

「俺は2o。君の、sdsちゃんの飼い主だよ。それでここは俺の地下室ってわけ。」

へー、!ってことはアナタが飼い主さん!? よろしく!

「…ああ、よろしく。」

…ところで、お兄ちゃん何持ってるの?
もしかしてそれって首輪?そんなものどうするの?

「どうするって、この首輪は君につけるんだよ。
 飼い犬に首輪を付けるのは当然だろ?」


…えっ?







153 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/17(火) 21:36:00 ID:HCdEFbh+
これからってのに終わるなんてひどい><

154 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/18(水) 20:14:31 ID:jYuuDA7w
「じゃあ返して来ますんで。あと朝御飯ですよ。」
「よろしくねー。」

ハズカシさんはようやく部屋を出て行き、階段を下っていった。

「さて……返さなきゃな……」

いくら頼まれたからと言って、
女性に下着を返すという行為はあまり気持ちの良い物ではない。
どう話そうか考えながら閣下さんの部屋へと向かう。

ノックをする。
返事はすぐに返ってきた。

「ntです。あの……洗濯物が……」
「あっ……しまった!忘れてた!!」

155 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/18(水) 20:14:49 ID:jYuuDA7w
どうやら洗濯物のことは忘れていたようだ。
これで多少は話がしやすくなるかもしれない。

「で、ハズカシさんが取り込んでくれたそうです。」
「……そうか。」

途端に嫌そうな顔になった。
それでも一応受け取ってはくれた。

「あ、あと朝御飯ですよ。」
「分かった。←君は私が伝えておくよ。
 彼とは話しにくいだろ?」
「じゃあお願いしますね。」

閣下さんは笑いながら話した。
しかしどことなく寂しげな笑いに思えた。

156 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/18(水) 20:14:58 ID:jYuuDA7w
僕は台所へと戻った。
そこには閣下さんと←さんを除く全員が揃っていた。

「呼んできましたよ。」
「ありがとう。じゃ食べましょうか。」

僕たちは食事を始めた。
その時に閣下さんが台所へ来た。
←さんの姿はない。

「←君は後でいいってさ。」
「そうですか……」
「皆で食べればいいのにねぇ……」
「きっと彼には彼の事情があるんだよ。
 あまり言ってやるな。」

兄貴さんは一番の年上であるせいか言葉には説得力がある。
僕が←さんの立場だったらきっとそう願っただろう。


157 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/18(水) 20:15:07 ID:jYuuDA7w
食事はいつものように終わった。
ただ違ったのは終わった後、
ハズカシさんが閣下さんに問いつめられていたことだ。

あまり関わりたくないので僕は部屋に直行しようとした。
その時、ミコネコさんが話しかけてきた。

「nt君、ちょっといいかな?」
「あ、はい。」
「じゃあちょっと私の部屋に来てください。」

僕はミコネコさんに案内されるまま彼の部屋に向かった。

158 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/18(水) 20:15:27 ID:jYuuDA7w
こkダブゥ

159 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/18(水) 21:47:11 ID:BP/BKrY+
続きが気になるダブゥ

160 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/21(土) 20:40:50 ID:dbl8Ffgk
「さてと……どうぞお座り下さい。」
「はぁ。」

何やら重々しい話し方だ。
何を話すのやらと不安になった。

「近々祭りがあるんです。ホマチ神社の。」
「あぁ、祭りですか。」

祭りのことと聞いて安心した。
別にこれといった深刻な話ではないだろう。

「そうです。その祭りのことなんですが……」
「はい。」

ミコネコさんの言葉が詰まった。

161 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/21(土) 20:41:02 ID:dbl8Ffgk
「……生け贄って知ってますよね?
 それがあるらしいんですよ。」
「……え?」

突飛な発言に呆然とした。
生け贄だって?そんなものがこの現代にあるはずがない。

「冗談ですよね?」
「冗談だと良かったんですがね……」

ミコネコさんは深いため息をついた。
そして話を続けた。

「調べたところによると毎年男女一人ずつが居なくなってるんですよ。」
「…………」
「それも大概はこの村以外の人がね。」
「……信じられません…………」

162 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/21(土) 20:41:13 ID:dbl8Ffgk
心からの感想だった。
こんな親切な人が多いこの村でそんな事が起こるなんて思えないからだ。

「でしょうね……私も信じられませんでした。
 この村の人口推移を調べたんですよ。
 そしたら死亡者数と人口の減少数が合わない時があるんです。」
「……それが村内から出た犠牲者だと?」
「そうみたいです。
 それ以外は観光客が亡くなっているみたいなんです。」

観光客。つまりこの村に一時的に訪れた人だ。
その人が亡くなるということは……

「…………」
「真っ先に狙われるのは私たちでしょう。
 祭りの日が近づいています。気を付けて下さい。」
「……この事は警察に報告しないんですか?」

163 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/21(土) 20:41:26 ID:dbl8Ffgk
「できたらいいんですがね……証拠が不足しています。
 それにもし村の誰かに感づかれたら……」
「そんな……」
「私の考えは推測にしか過ぎません。
 ですが祭りの日に人が消えるというのは事実なんです。」

雷鳴が鳴った。
外はいつの間にか暗雲が立ちこめていた。

「この事は他言しないようにして下さい。
 話したらあなたも危険が及びます。」
「……」
「私はきっと村人に目を付けられているでしょう。
 あまりにも神社に近づきすぎました。」

ミコネコさんは自嘲気味に笑った。
目の前にあるかもしれない死を受け入れる準備はあるようだ。

「私がもし死んだらその後はよろしくお願いしますね。」
「死んだら困りますよ。
 僕はミコネコさんみたいには行動できないんですから。」

僕もミコネコさんに合わせ笑う。
心は恐怖でいっぱいだ。
でもこうでもしないと恐怖に押しつぶされそうだったのだ。

164 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/21(土) 20:41:38 ID:dbl8Ffgk
kダブゥ

165 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/21(土) 22:14:58 ID:uKiw6DGM
なんだかひぐr(ry

166 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/22(日) 16:25:35 ID:SaATd60Q
わかったぞ、生贄ってのはホマチ神が封印したと言う
一つ目の化け物に捧げるんだな、きっとそうだ

167 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/23(月) 20:28:40 ID:lZIahkAs
ミコネコさんは表情を戻しこう言った。

「……とにかく身の安全には気を付けるべきです。」
「…分かりました。」
「では、お気をつけて。話はこれだけです。」
「…どうも。」

ミコネコさんの部屋を出た。
廊下の小窓から見える景色は相変わらず暗雲が立ちこめている。

僕は何も言わずに部屋へと向かった。

さっきの話は本当なのだろうか。
本当だとしたら僕は殺されてしまうのだろうか。
このまま皆に黙ったままでいいのか。

――そんな事を考えながら。

168 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/23(月) 20:28:57 ID:lZIahkAs
僕は部屋へ入りドアを閉じた。

畳んだ布団にもたれながら座る。

「生け贄……か……」

天井を見ながら呟いた。
取り留めもない思考が脳内を行ったり来たりしている。
考え出したらきりがない。

何故、誰が、何のために、どのように――
考えても分からない。そんなことは分かっていた。
だがどうしても考えは止まることを知らなかった。

169 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/23(月) 20:29:16 ID:lZIahkAs
「……普通はそんなことないよな……」

僕は生け贄なんてないと思い始めることにした。
だってそうだろう。この現代に生け贄なんてあるはずがない。

「ミコネコさんのはきっと冗談に決まっている。
 神社でも冗談を言っていたじゃないか。」

僕はそう小さく言い放ち立ち上がった。

「……無いに……決まっているさ。」

そう思いこめば恐怖は見えなくなる。
だが恐怖は消えたわけじゃない。存在し続けた。

170 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/23(月) 20:29:48 ID:lZIahkAs
僕は机に向かい卒論を書き始めた。

普段は書くのも面倒くさいと感じていたが今回ばかりは違った。
恐怖からの逃避には作業に集中するのがよい。
ミコネコさんの話が気にかかり進行は遅いがそれでも良かった。
とにかくこの場は恐怖を忘れたい。その一心だった。

「無いに決まってるさ…!」

時々そのような事を口走る。
それでも恐怖は僕の心から消え去ってくれなかった。

171 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/23(月) 20:30:11 ID:lZIahkAs
ダブゥ

172 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/23(月) 20:31:34 ID:FCRbcCeg
オチュオチュ

173 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/24(火) 13:21:16 ID:ivHiLBQE
しけてやがんなぁ、nt!
「あるわけが無い」と常識で考えるより、「あるのかも」と期待するほうが面白いんだよ! 楽しいんだよ!
面白いほうを、楽しいほうを、夢のような話を選ぶのが正しいんだ! 例えそれが恐怖でも!
イッツァハルヒイズム。

174 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/28(土) 21:31:35 ID:???
卒論に没頭して数時間たった。
相変わらず空模様は悪い。そしてまた、恐怖は消えなかった。

「ふぅ……」

一通り書き終えた僕はシャープペンを手放し、
そのまま仰向けに寝そべった。
外は雨の音が絶えることなく続いている。
その音はずっと続くかのようにも思えた。

「……寝よ……」

何も考えずに済むのには寝るのが一番良い。
嫌な事でもその間はしばらく忘れられるのだ。

175 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/28(土) 21:31:52 ID:???
布団を敷き直し布団の中に潜り込んだ。

昔から布団の中は安全と言われている。
実際には、地震などには殆ど太刀打ちできないのだが、
何も見えなくするというのは一つの安心する方法なのだそうだ。

眠れない。
何故かその時は布団が重く感じ、さらに息苦しく感じた。
あまりにも恐怖が僕の心に根付いていたのだ。

それでも僕は目を瞑り、寝ようと試みた。
雨の音、時折聞こえる雷の音、荒れる海の音、そして不安。
寝られない要素はたくさんあったが僕は寝ることが出来た。

176 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/28(土) 21:32:11 ID:???

嫌な夢が僕の目を覚まさせた。
今となっては思い出せないが相当恐ろしい夢だったと思う。
妙な汗が大量に出ていた。

「………夢……か…」

夢で良かった。
夢でなかったらいったいどうできようというのだ。
自分が生け贄となって殺されそうになっても助かる術はない。

その時ノックの音がした。
僕は突然の音に驚いた。

「うぁっ!……あ…どうぞ…!」

ドアが開かれた。
音の主はsdsさんだった。

177 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/10/28(土) 21:32:29 ID:???
「あっ、ごめん。寝てたのかい?」
「いえ、さっき目を覚ましたところです。」

良かった。
一人で居るとどうしても不安になる。
誰とでもいいから会話すれば多少は気を紛らわせることができる。

「今、又ちゃんのトコでトランプとかやってるんだけど来ない?」
「あ、是非。ちょうど暇だったんで。」

タイミングのいいことにみんなで騒ぐことができる。
これならばきっとあの恐怖も忘れられるだろう。

178 :◆VV.HtNrxUA :2006/10/28(土) 21:32:57 ID:???
ここまで

179 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/28(土) 23:23:15 ID:???


180 :真夜中は別の人『フクロの記憶』 ◆ackVh57YJ. :2006/10/30(月) 05:59:33 ID:???

誰かが、言った。

『嘘の含まれない歴史など、退屈なものだ』

『歴史』は変えられないものだと人は言う。
だが、そもそもその『歴史』とやらが最初から『変えられた』ものであるのならば―

また別の誰かは語る。
『歴史とは勝者のために作られる』
彼らの作る歴史は虚飾に満ちている。
恣意的解釈、作為、欺瞞、悪意、そして嘘。
そして、弱者や敗者は彼らに対抗し、いつか取って代わるために
別の歴史を紡ぐ。自分達の敵と、ヽ手段で。

よろしい。歴史とはまさに『それ』だ。
では、『これ』は何か?
嘘もなく、悪意もなく、恣意もなく、体系もなく、時系もなく、善意もなく、
欺瞞もなく、偽善もなく、鼓舞もなく、告発もなく、
時には、真実ですらない。
    ・ ・ ・
私が、私たちが、かつて体験した、はるか昔の出来事。

これから、私が語ろうとしているものは果たして何であるのか―?

最悪板の、蟻板の、あるいはAA板の、
 
       過 去 ロ グ
遠い昔の“ 記 憶 ”―

181 :真夜中は別の人『フクロの記憶』 ◆ackVh57YJ. :2006/10/30(月) 06:10:20 ID:???

【ダブ殺害未遂事件(Roo事件)】
―最後にダブフサに会った夜、彼は非常に落ち着かない様子だった。
 この時の彼の表情を、私は今でもはっきりと思い出す。
 私はいささか気の毒な思いを禁じえなかった。
 今思えば、彼のやつれた顔を見て単純に「精神的、肉体的な疲労」から
 きているものだろうと考えたのは間違いだったのだろう。
 私は、何故、彼があんなに虚ろな眼をしていたか、
 なぜあのような(ダブゥ…ダブゥ・・・といった)意味不明な単語を何度も繰り返し口走っていたかについて、
 もっと深く考えるべきだったのだろ う― 

                   ――2007年に発見された当時の茶屋の手記より


03末期から04ごろにかけて、「次期フクロの旗手」であるラギは
周囲の多大なる期待に今一歩答えられず、伸び悩んでいた。

そこで、かねてからハズカシの影響下にあったラギを嫌っていた
一部stらの間で新たな「継承者」を擁立しようと画策する動きがあり、
小規模な内部抗争の後、04初期には、ほぼダブで一本化された。
しかし、ダブは実力はラギと劣らぬものがあったものの、
精神的に不安定で一般層のstたちの支持を得られなかった。

それを見たラギ擁立派はダブがその潜在能力を開花させぬうちに、
刺客を送り、彼を葬り去ることに決めた。その刺客こそがRoo―
後の芋虫である。

ダブ派でも早期にこの動きを察知していた向きがあったが、
04年3月の雑談スレでの失態から、既に取り巻きの一派には彼に対する
諦めからどこか見放していた節があったことも否めない。
皮肉にも、彼の能力を買っていたのはライバルであるラギ派のほうだった。

結果ダブは重傷を負ったものの、死ぬまでにはいたらなかった。
が、信頼を寄せていたRooの裏切りによる精神的ショックは大きく、
これ以降あまり歴史の裏舞台には顔を出さなくなってしまうことになる。
理由は突如として難病を患い、身体に障害を負ったためとも、
単純に世の中に嫌気がさして沖縄に隠遁したためとも言われる。
(巷では無性生殖して「ダブゥ」というマスコットキャラになったという
 荒唐無稽な噂が流れたが、これには当局がいち早く反応し、ダブ本人の署名付きで
 「ダブとダブゥは無関係」という声明を発表している。
 ただ、この件でダブ本人は一切公に姿を現していない)
 
一方、任務を成功させた当時無名のRooは、次第にフクロ内部での発言権を強め
後に独立。いわゆるラジオ党の領袖として歴史に名を刻むまでにいたる。

この事件で不穏分子の排除に成功したフクロ主流派は
束の間を平穏をフクロスレにもたらすが・・・

182 :真夜中は別の人 ◆ackVh57YJ. :2006/10/30(月) 06:12:16 ID:???
今日はここまでんこ

183 :ダッブゥ!:2006/10/30(月) 07:22:21 ID:???
ダッブゥ!

184 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/10/30(月) 12:20:16 ID:???
新規書き手キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆

185 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/02(木) 20:14:40 ID:???

「ストレートッ!」
「えー! 勝てると思ったのにー」

sdsさんと共に又さんの部屋に来ると
そこには又さん、管理人さん、閣下さんがいた。
どうやら閣下さんはこういうゲームが得意なようだ。

「連れてきたよ」
「おっ。来たか」
「どうも」
「じゃ、早速やろうか」

僕らは机を囲みトランプを始めた。
あの話を忘れることが出来そうだ。

186 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/02(木) 20:14:57 ID:???

「8で止めてるの誰だよー」
「じゃあ、そろそろ出そうかな」
「な! さっきパスしていた癖に!」
「勝負の世界は厳しいのだ。」

皆で騒ぎながら七並べをする。
8と6の辺りで何カ所か止まっている。
かく言う僕も実は6で止めていたのだが。

「じゃあ、僕も出しますね」
「あんたもか!」

しかしこの後管理人さんに5で止められてしまった。

「よし、そろそろ5を出そうかなー♪」
「管理人さん……」

187 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/02(木) 20:15:24 ID:???

その後も大富豪、ポーカー、ブラックジャックなどをやった。
そして一段落したところで又さんが話しかけてきた。

「ところでさっきntさんはミコネコさんと何を話していたんですか?」

その途端、あの恐怖がまたこみ上げてきた。
しかし今ここであの話を正直に話すべきなのだろうか。
とっさの判断に僕は虚を突かれた。

「あ……あぁ。祭りの事について教えてくれたんだよ。
 僕がホマチ神社の事を知らないからだろうからって」
「へぇー。そうなんですかー」

……なんとか場を繋げることはできたようだ。
しかしここで本当の事を言っておいた方が良かったのかも知れない。


188 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/02(木) 20:16:00 ID:???
「あ、もうそろそろご飯作らなきゃいけませんね
 じゃ、私はこれで……」

管理人さんはそう言って立ち上がった。

「じゃ、手伝いますよ」
「それじゃあ、私も手伝おうかな」
「いつもすいません。じゃ、作ってきますね」

そう言って三人は部屋から出て行った。
部屋に残ったのは僕と又さんだけだった。

「二人だけになっちゃったねー」
「そうですね……二人じゃトランプしてもなんだしなぁ……」
「あっ…………それより…………」
「? なんですか?」
「……ミコネコさんからあの話聞きましたか?」


189 :◆VV.HtNrxUA :2006/11/02(木) 20:16:41 ID:???
ここまで

190 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/02(木) 20:18:49 ID:???
(*゙∀゙) ダッブー!

191 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/03(金) 04:53:39 ID:???
ウワーイ
続きキタ!ダブぅ!

192 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/07(火) 19:31:17 ID:???
「え……」

返答に詰まった。
ミコネコさんは又さんにも話したのだろうか。
それとも又さんも村の一員として僕の動きを探っているのだろうか。

「……あの話って……?」

とりあえずこちらからも聞くことで相手の出方を探ることにした。

「その………………生け贄……のことです…………」

生け贄という言葉を知っている。
つまり、それを知っているということはミコネコさんとの接触があった、
もしくは村の一員だからということだ。

「生け贄…………ですか……?」

また、僕は質問で相手の出方を探ることにした。

193 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/07(火) 19:31:33 ID:???
「……えっと…………ミコネコさんが教えてくれたんですが……」

又さんは続いて僕がミコネコさんから聞いた内容と同じことを話した。

「……という訳なんです」
「……そうですか……」

僕はしばらく間を作った。
返答を考えるためだ。
本当にミコネコさんの話を聞いたのか、あるいは…………

そして僕は又さんを信用することにした。

「……はい。その話なら僕も聞きました」
「良かった……仲間がいて安心しました」

194 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/07(火) 19:31:50 ID:???
「私も、ミコネコさんよりは少し前ですが、
 このフクロ荘に来たばっかりなんです」
「そうだったんですか。すいません。少し疑ってしまいました」
「それは仕方がないですよ。命に関わることなんですから……」

依然として雨は降り続けている。
その時廊下の方で音がした。

まずい。だれかに聞かれたのかもしれない。
僕はドアに向かって急いだ。

ドアを開けるとそこにはハズカシさんがいた。

「ハズカシさん……?」

195 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/07(火) 19:32:07 ID:???
「や…………やぁ、nt君……」

多少動揺しているようだ。
何か聞かれたのかも知れない。

「……なんですか?」
「いや、男女二人が一つの部屋でずっといるのは不自然に思ってね
 もしかしてセッk」

バゴッ

又さんのパンチが炸裂した。一撃KOである。

「な……何を言ってるんですか!!!」
「ぐは…………」
「あ……じゃあ僕は帰りますね…………
 明らかに迷惑になってるんで……」
「……すいません…………」
「いやいや、悪いのは又さんじゃないですから……」

悪いのは当然この廊下でへたばっている人である。

196 :◆VV.HtNrxUA :2006/11/07(火) 19:32:34 ID:???
ダブダブ

197 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/07(火) 19:44:51 ID:???
ダブーッ

198 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/07(火) 20:16:09 ID:???
なんですかこのひぐらしは

199 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/07(火) 22:10:16 ID:???
寂れた漁村…生贄…
こ、これはまさか…!
…はっ!


…私に何かあった時のためにこの手記を残そう
願わくばこの手記を読んだものが死の恐怖に苛まれんことを…

200 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/07(火) 23:28:04 ID:???
実はこの村、ターゲット以外全員が仕掛け人。
そうとは知らずこのターゲット、びびりまくりである。

201 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/08(水) 07:17:11 ID:???
続きキタわー!
ダブッダブッ
長編描きは小説書いてる奴けっこういるのか?

202 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 17:58:59 ID:???
足早に部屋に戻った。
とにかく人と会うのをできるだけ避けたいと思ったからだ。

そしてさっきの事を反芻してみた。
ハズカシさんはドアの前にいた。
あの話を聞いていなかったという保証はない。

もしハズカシさんが話を聞いていたのならば――
僕は一体どうなってしまうのだろう。

ハズカシさんは僕の味方になってくれるのか、それとも――

「ご飯ですよー」

突然の呼びかけに僕はビクッとなってしまった。
思考は中断されてしまったが、
考え続けたとしても良い結果は出なかっただろう。

203 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 17:59:12 ID:???
「はーい」

とりあえず返事をし、台所へと向かうことにした。
誰かに何か言われないかと不安でいっぱいだった。

「いただきます」

昼食はいつものように始まった。
特に普段と変わったところはない。
僕の気にしすぎだったのだろうか――

結局あの話に関することは一つも出なかった。
どうやら僕の気にしすぎだったようだ。
おかげで少し安心した。

204 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 17:59:20 ID:???
昼食を終え部屋に戻った。
やっぱり生け贄なんてないんだ。
そう思えると大分気が楽になった。

「これで気兼ねなく過ごせるぞ」

空もいつの間にか雨が止み、青空が雲の合間から伺えた。
気分も晴れやかになり、心が晴れ晴れとする。

机に向かい卒論に取り組む。
心に余計なモノがないために捗った。


その時、ドアの向こうから声がした。

「nt君。いるかい?」

205 :◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 18:00:13 ID:???
どうやら倦怠期に入ってしまったみたいだ('A`)

206 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/15(水) 19:32:30 ID:???
倦怠期にはちょっと新しいことを試してみよう!
彼女が嫌がらなければソフトSMなんかいいかも!

207 :◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 19:44:39 ID:???
彼女なんてイネーヨ

208 :◆VV.HtNrxUA :2006/11/15(水) 19:47:54 ID:???
それよか最近忙しいから困る。

209 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/11/16(木) 19:13:29 ID:???
時間が出来て、書きたくなったらドカーンとやればいいべ

210 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/12/07(木) 18:38:20 ID:tm4mQNoU
この声はハズカシさんの声だ。
──やはり聞かれていたのだろうか。

「あ、はい……」

ドアが開く、そしてハズカシさんは部屋に入ってきた。

「さて……」

ハスカシさんは間をおいた。
何を話すつもりなのか気が気でなかった。

「nt君達はもう知っているみたいだね?」
「……はい?」

まだハズカシさんが信用できると決まった訳じゃない。
僕はとりあえずはぐらかすことにした。

211 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/12/07(木) 18:38:30 ID:tm4mQNoU
「大丈夫だよ。別に襲ったりなんかしない。むしろ逆さ」
「……逆?」

この人がどこまで知っているのか分からなかった。
とにかくあまり自分から情報は出さないことにした。

「今は詳しくは言えないかな。
 ただ、あんまり深入りしない方が良い。
 絶対に村の人にはこの事を聞かれちゃだめだ。いいかい?」
「は……はぁ……」

……何なんだ?
この人は一体この村の何を知っていると言うんだろうか?

「ハズカシさんは……一体何を知っているんですか?」
「それを言ったらこっちの身も危ないんだよ。
 君も知っているんだろ?」

212 :八日目 ◆VV.HtNrxUA :2006/12/07(木) 18:38:37 ID:tm4mQNoU
明らかにいつものハズカシさんじゃない。
いつものハズカシさんはもっとこう……
いや……今は別に重大な問題ではない。問題ではあるが……

「…………」
「十分に気を付けてくれ。君は少し知りすぎているかもしれない」

沈黙が続いた。

「……さてと、話はこれだけだ。本当に気を付けてくれ」
「……」

僕は黙ったまま頷いた。

「それじゃ。」

ドアが締められた。
空の晴れやかさとは対照に心の中は曇りきった。

213 :◆VV.HtNrxUA :2006/12/07(木) 18:39:03 ID:tm4mQNoU
受験生が何をやっているんだとのこと。
これは大変だ。

214 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/12/07(木) 19:05:37 ID:LdMTGAZU
オッツー
こんなのハズカシじゃない!

215 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/02/13(火) 22:04:30 ID:RI23jyko
続きマダー?

216 :ぷろろーぐ:2007/03/16(金) 21:25:17 ID:5wrAKzaM
「ついに完成したシポー!!」
 薄汚い赤いレンガで出来た家から、歓喜の声が上がる。

 この家の住人の名前はしぽぽ。
 そして、この住人のペットは彼についてこう言っている。

 一言で言うと変態。
 二言目には宿主。
 三言目には腹黒は僕が乗っ取ってる部分だよ!

 ちなみにこのペットの座右の銘は『黒幕』。

 さて、そんな腹黒様は置いておいて、しぽぽのいる部屋へと場面を移す。
 しぽぽの部屋は薄暗く、所々コゲ跡がある。
 大きな机が中央にあり、本や試験管などのいかにもってくらい怪しい研究室の雰囲気が漂っている。
 使われてないのか、机の端の方にある、乱雑に積み重ねられた本は埃まみれである。

 当のしぽぽはというと、机に置かれた電球を前に唇の端を歪ませ笑っていた。

「これでッ! しぽぽはッ! 世界征服が出来るッ!!」


=しぽぽの野望=
〜 エターナルフォースブリザードの名の下に… 〜

217 :ぷろろーぐ:2007/03/16(金) 21:26:14 ID:5wrAKzaM

 久々に外に出てみようと、研究室を後にする。
 まあ、研究室と言うには少し稚拙だが、お金がなにのだ、仕方ない。

 研究室を出るとまず、洗面所に行く。
 蛇口を回すと、水が勢いよく流れ出た。
 それを手で掬い、顔を洗う。
 あまりの冷たさに毛が逆立つが、同時に先ほどまで興奮していた気持ちが冷静になる。

 次に白衣と下に着ているシャツを脱ぎ、横に置いてある籠に入れる。
 そのまま、歯ブラシを手に持ち、歯を磨く。
 歯を綺麗にするコツは細かく左右に優しく擦ることだ。
 そして、横に綺麗たたまれている洋服から、茶色のTシャツと黒いシャツを手に取り、着込んだ。

 軽いご飯代わりに台所から、リンゴを一つ手に取ると、そのまま、玄関へと足を運ぶ。
 ここで、とあることを思い出し、「あっ」と口に出す。
 私はあわてて、研究室へと足を運ぶ。

 研究室に戻るついでに、窓を開ける。
 別に研究室を隠してる訳じゃないんだから、場所は地下じゃなく、一階だ。
 気持ちいい風が頬を撫で、毛をなびかせた。

 そして、机の上に置かれた電球を手にする。
 電球には棒が付けられており、棒には赤、青、様々な色のボタンが取り付けられている。

 それを手に取り、近くにあった茶色い鞄に詰め込むと、再び玄関へと戻る。

 家の外へと通じる、扉のノブに手をかけ……

「あいたッ!」
 指とドアノブの間に静電気が走った。
 思わず手を引いてしまった。
 寒い時には重宝するが、毛がありすぎるのも困った物だ。

 再び、ドアノブに手を伸ばす。
 そして、回す。……回らない。
 気付くと視界が小刻みに揺れているのが分かった。
 地震?かと、思ったら違うようだ。
 ふるえているのは俺の足。
 ドアノブが回らないのは手に力が入ってないため。

 そうか、私は研究に没頭するがあまり、
 知らず知らずの内に引きこもってる時間が長くなり、恐怖症になっていたのか。



 ……人と会うのが怖いです。ミコネコ先生。

 〜続く〜

218 :童貞連血風録:2007/04/01(日) 22:41:37 ID:glOsvjJs
【プロローグ】

  時は幕末のようなそんな感じの時代。

 当時、AA地方において爆発的に増加した厨房・荒らしは、
 混乱をしずめるために規制を強化する2本国運営側に反発。
 長辺藩、茂名藩、砂龍藩、亜炉絵藩、丹打藩のいわゆるAA5藩で同時多発的な一揆を決行。
 後に「AAの変」と呼ばれたこの反乱は時の茂名藩藩主、サ骨によって直ちに鎮圧されたものの
 この時の残党勢力が「ヤリチソ党」を結成。既存の支配体制からの脱却を旗印に、
 2本各地で同士を募り、テロによる破壊活動を開始した。

 これを憂う2本国主ひろゆきはサ骨に命じ、対ヤリチソ党討伐組織を結成。
 特にヤリチソが勢力を持っていたtmp地方に派遣し、蟻藩袋町に屯所を定めた。

 自由を謳うヤリチソ党に対し、彼らは清廉・厳格を旨とする「童貞連」を名乗った。

 
 2本最後にして最強の剣客集団、【童貞連】の誕生である―

219 :童貞連血風録:2007/04/01(日) 22:46:47 ID:glOsvjJs
童貞連組織図概要

 局長   ― 矢野 犀五郎
 総長   ― 恥樫 蔵部(貞長)
 副長   ― 波久礼 神子二郎

 参謀   ― 尾野 志保太夫

会計監査方 ― 辺母良堂

諸士観察兼取締― 影薄(四ツ瀬)揶揄与左衛門
         本洲 義一

一番隊―【隊長】虎木 天馬
    【助勤】庵田 獅子丸
        騨武 真由

二番隊―【隊長】五場 久
    【助勤】辺戸 雷夫

三番隊―【隊長】尾藤 唄ノ介
    【助勤】丑子 小次郎
        馬風 兵馬

四番隊―【隊長】塗留 健二
    【助勤】及火 武留馬
        井母 武士 
        色部 伊織
        弓場 玉子朗
        檀名 顔蔵

五番隊―【隊長】天長 存弥
    【助勤】夜暮 一人
     

局長付御側衆・「英々友」
  【機関長】−江口 武将

220 :童貞連血風録:2007/04/01(日) 22:48:01 ID:glOsvjJs
【塗留殺し】




  塗留が死んだ。
  殺された。



 その報を受けた時、童貞連二番隊隊長である尾藤 唄ノ介は丁度春季休暇で田舎にいたものだから、実家のあるAA藩から蟻藩にある屯所に着いた28日早朝にはもう塗留の通夜は終わっていた。

 その場で、緊急の幹部会議に出席するよう告げられ、急ぎ旅の息のつく間もなく会議の行われる奥の間の方へと向かった。この広い座敷部屋には既にほとんどの面子が揃っていたが、肝心の局長―矢野 犀五郎の顔だけがまだなかった。いつものことだ。もっとも、毎度会議において彼が通常成すことといえば始めの議題確認と、最後の決定事項の確認くらいのもので、会議の最中は特に何も意見するわけでもなく、ただ上座に座り、終始皆の議論に耳を傾けているだけなので矢野などいなくとも実際の会議に差し障りはないのであるが、この場でそのことを口にするものなど一人もいない。

「尾藤君、せっかくの休暇に急に呼び出ししてすまなかったラギね」
 奥の間へと入ったヌルに最初に話かけてきたのは虎木一番隊隊長だった。童貞連でも古株の一人で、尾藤も平隊士だった時分から随分と世話になっている。塗留が死んで他の皆が一様に沈んでいる中、この人だけはあっけらかんとしている。

 もしかしたら、虎木が殺したのかもしれないな、という考えが尾藤の脳裏をかすめ、即座に打ち消された。
 このような大事が行われるのであれば、彼に事前に知らせるまではないにしても、それとなく休暇を返上するように達せられるはずである。
 
 「粛清屋」虎木の子飼いである尾藤なら、なおさらのことだ。

 ということは、塗留の今回の死は童貞連にとって全くの想定外ということになる。
「こんなことになった以上は是非もないですよ
 何せ隊長級の幹部が亡くなったんですからね」
「兄貴以来、ラギか」
 ぽつりと呟くラギの人懐っこい笑顔にもう一つ全く別種の冷たいものが浮かぶ。
 他の者にはそれがほとんど判別できなかったであろうが、尾藤には解った。

 尾藤はいやな思い出を振り切らんとに首を振り、
「ですが、今回の件は内部粛清によるものではないのでしょう?
 それなら俺かあなたの耳にも一言くらい入っていてもいいハズです
 彼は夜半に一人でいたところをヤリチソどもの卑劣な奇襲によって殺されたと、聞きましたが」
「そう、まさにそこラギよ。おかしいとは思わないラギか。あの慎重な塗留くんが夜半に友もつけずに外で一体何をしていたのか?またなぜヤリチソは彼の居場所を知っていたのか?複数人におそわれたとはいえ、童貞連でも手練である彼がそう簡単にやられるものなのか?」

 尾藤に投げかけられた疑問形の嵐はしかし、その実どれも一つのある結論に収束していた。
 そして、その結論に達したとき、尾藤は塗留の死以上の衝撃に襲われた。
 その驚きが若い彼の顔に出てしまったようで、尾藤を見つめるラギの頬が奇妙な引きつりを見せる。
「・・・まさか。いや、しかし塗留さんが、そんなまさか−」
「だから、これからそれを話しあうラギよ、尾藤くん。この会議でね」

 そこへようやく局長・矢野犀五郎が奥の間に姿を見せたので、二人は自らの席へと戻った。
 会議の席上、塗留が隊長を務めていた四番隊の新しい隊長として四番隊副長・及火が選ばれた旨が手短に告げられた。

 そして、議題は塗留殺しそのものへと移る―
「・・・まさか。いや、しかし塗留さんが、そんなまさか−」
「だから、これからそれを話しあうラギよ、尾藤くん。この会議でね」

 そこへようやく局長・矢野犀五郎が奥の間に姿を見せたので、二人は自らの席へと戻った。
 会議の席上、塗留が隊長を務めていた四番隊の新しい隊長として四番隊副長・及火が選ばれた旨が手短に告げられた。

 そして、議題は塗留殺しそのものへと移る―


221 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/04/02(月) 02:19:53 ID:5PYqHHp2
フリガナきぼん

222 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/04/02(月) 02:29:23 ID:wupy8ap+
じぼれとかみほまちで十分だ

223 :童貞連血風録:2007/04/02(月) 17:55:27 ID:WJ6TN/2o

  幹部級の隊士たちがこのように一堂に会すのは何年ぶりだろうか。
 有木が死んだ夜以来だったか、あるいは「蒼」のふたつ名で呼ばれたヤリチソの巨魁を討った時以来だったか。
 いずれにせよ、彼らがこのように揃うのは敵味方問わず誰かが死んだ時と相場は決まっている。

 尾藤は居並ぶ一同を下座に控える五番隊隊長・天長 存弥(あまなが ぞんび)から順に視線を移していった。
 ―四番隊隊長の席はまだ空いたままだ―
 二番隊隊長・五場 久(ごば ひさし)、
 一番隊・虎木 天馬(とらぎ てんぱ)、
 相談役も兼る会計方総取締・辺母良堂(へぼらどう)、
 参謀・尾野 志保太夫(おの しぽだゆう)
 副長・波久礼 神子二郎(はぐれ みこじろう)、
 前局長で総長の恥樫 蔵部(はじかし くらぶ)
 そして局長・矢野 犀五郎(やの さいごろう)
 
 ―誰か一人、忘れているような気がする。
 そういえば、監察の本洲 義一(ぽんず ぎいち)だったか。
 いや、あれの上役がもう一人いたような・・・やはり気のせいだろうか。
 

 心に引っかかるものを覚えつつ、尾藤はもう一度局長の矢野に目をやった。

 やはり、というべきか。
 寝ている。
 
 とある不祥事の責任の取って局長職を退いた恥樫の後を継いだはいいものの、
 退いた後も恥の権勢は根強く、実質いまだに恥が局長だと連の内外から見なされている。

 家柄は良いが、生来の怠け性である矢野は居ても居なくてもさして影響はないという意味で「昼行灯」と連内で陰口を叩かれ、
 心無いものは恥の操り人形であるとすら評した。

 確かに局長に就任してからというもの、彼のやったことで特筆すべきは局長直属の親衛機関
「英々友」を立ち上げ、古参の一人である江口 武将(えぐち たけまさ)をその長に任じたことくらいで、
 その英々友もやはり厄介者の隔離所だの局長のオセロの相手だのなんだのと、連内での受けはあまり良くない。

 それでも―と、尾藤は思うのだ。
 家柄だけでこの血なまぐさい組織の中で生き残り、あまつさえ局長になれる、というのはそれだけで侮るべきことでない。
 ましてや、童貞連の歴史は内部粛清の歴史でもある。
 今幹部として生き残ってる連中は一癖も二癖もある剛の者ばかりで、
 ただ頷くばかりが能の昼行灯の座る席など空いてはいない。
 むしろ、家柄だけが良い無能者など恥が最も毛嫌いするところであり、
 真っ先に切り捨てられててもおかしくはないハズだ。

 しかし、現実には恥はどうも矢野を一目置いているところがある。
 彼を局長に指名したのが何よりの証拠だ。

 ―果たして、
 知らずのうちに自然と尾藤は恥の方を睨んでしまっていた。

 果たして、矢野はただの恥の傀儡であるのか。それとも―

「さて、諸君」恥樫が静かに口を開いた。

224 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 00:09:43 ID:6R1Pj8Bk
拙い文だけど書いてみる。飼いネタを書くと言ったけど
かなり別物になりそうな悪寒

225 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 00:10:14 ID:6R1Pj8Bk
僕は大学へ進学するに向けてあるアパートの一室を借りることにした。
そこは近くに駅、コンビニと立地条件も良く、日当たりも良い。
その上家賃が月3万と都心近くにしては破格の条件だ。

だが、そのような好条件には大概裏がある。
大家さんの話では僕の借りた部屋は「でる」らしい…
数日に一回夜中になると部屋の隅から子供のすすり泣く声が聞こえるとか聞こえないとか…
まあそれで、借りた人はみんなすぐに解約してしまい今に至る…と。

正直僕は幽霊なんか信じてないし、天下の大学生…なったばかりだけど、
とにかくお金は節約したい。こんな好条件を逃す手はないのだ。

大家さんは僕に契約内容の話をしているとき、こう懇願してきた。

「お願いだから一週間で解約しないでください…」

しないって。多分。

226 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 00:10:36 ID:6R1Pj8Bk
とにかく契約完了しこのアパートから僕の新しい生活が始まった。
春休みの間に出来る限り身のまわりを調えておかないとと思ったが
前の人が結構家具を残してくれていたので一日の買い物で済んでしまった。
やっぱり前の人は「でる」部屋で使った家具なんて持って行きたくなかったんだな…

僕は仕送りをしてもらう予定なので、とくにバイトに就こうなんて予定はない。
本当に身のまわりの仕度が一日で終わってしまった。
とは言っても、流石にもう夕方、コンビニで買った弁当を食べて今日は早々に寝ることにした。

先程、幽霊なんか信じてないと豪語してたけどやっぱりあれは撤回する。
「でる」と言われる部屋で寝るのはやっぱり恐い。
一日、必要雑貨を買って回ったせいで疲れてはいるけどなかなか眠れない。
ふと目を開けて、天井を見つめた。別にシミとかがあるわけじゃない。
少し寝返りをうって辺りを見る。
僕の買った家具と前の人が使ってた家具が混じってちょっぴりカオスだ。

「…何か、あるわけじゃないよな、うん」

自分に言い聞かせるようにそう呟き、ミコネコ先生型時計のタイマーがかかっていることを確認してから
無理矢理寝てしまった。

227 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 00:11:04 ID:6R1Pj8Bk

「いい加減起きなさい!起きなければ鞭で叩きますよ!」

特徴的なタイマーの怒鳴り声で僕は目を覚ました。
先生を黙らせる為に頭の尖ってる部分を押す。痛い。
ボーっとしながら部屋を眺めているとそこはいつもの僕の私室と違った。
当たり前だ。もうここで一人暮らしをしているんだから。

日の光が真横から差してくる中、僕は昨日のことを思い出した。

「結局何も起きなかったな。いや、それが当然なんだけどな」

そりゃそうだ。何か起きる方がおかしい。
きっと前に住んでた人は極度の恐がりだったんだろ。うん。
僕は自己暗示のせいもあってか、何となく気分も晴れた。

身支度も終わってとくにやることもない。
とりあえず、街の探索でもしてみるかと、僕は街に繰りだした―…‥‥

―その後次の日も、そしてその次の日も何も起きる様子はなく
僕の頭からこの部屋が「でる」ということはすっかり消え去っていた。
実際出なかったんだから。

…でも、部屋を借りてから一週間後。ようやく話が動き出した。

228 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 00:11:20 ID:6R1Pj8Bk
ココマデ

229 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/08/28(火) 01:27:26 ID:QNy9OPVU
期待期待

230 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/10/17(水) 06:28:43 ID:Yoc+jIbg
フクロ小説スレにはエターなるの悪魔が住んでいます

231 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/10/18(木) 16:51:46 ID:Ml3CfJf+
>>230
そんな(;∀;)

232 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/01/23(水) 17:35:39 ID:CeviGxl6
ついにALLエターナるか…
このスレは地獄だ…

233 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/01/23(水) 18:16:04 ID:aeanA0LY
>>232
地獄じゃない
無の世界だ

234 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/01/28(月) 07:32:38 ID:kVsTFXNU
続きマダー?

235 :レ・フクラブル:2008/05/02(金) 16:55:33 ID:UHDLsL8Y

                                     /´⌒ゝ‐-、
                           . : .: (´⌒ゝ   ( レ'フ  ノー-、
 ╋───────────────      ``´  /⌒/´f':::;:;。'   }     ──╋
  |  ┃    ┏━┛ ┏━┛              . . .: : :{   {_ノ-、゚'”ゞ-<,        |
  |  ┃    ┏━┛ ━━┃        . . : :{`ー-、 . : : :ヽ._ 〉-、 }"´ ノ }  r‐ 、   │
     ━━┛ ━━┛ ━━┛       . . : (⌒ヽ ヽ. 〉 . : : :::{   〉‐-<.._.ノ _ノ  ノ    |
                         : : ` ー'  ̄´  . : ::::`ーヘ.__ノ    ` ̄´
 
  | ┏━┛ ┃  ┃ ┃┏┛ ┃  ┃ ┏━┃ ┏━┃ ┏┃   ┃   ┏━┛┏━┛
  | ┏━┛ ┃  ┃ ┏┃   ┃  ┃ ┏┏┛ ┏━┃ ┏━┃ ┃    ┏━┛ ━━┃  |
  | ┛     ━━┛ ┛━┛ ━━┛ ┛━┛ ┛  ┛ ━━┛ ━━┛━━┛ ━━┛  |
 ╋─────                 ───────────────────╋
 
                                噫無情 (Victor Hugo) よりパク(ry
 

236 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/05/02(金) 16:56:29 ID:UHDLsL8Y

                レ   フクラブル
              LES FUKURABLE  〜フクロな人々〜
 
               第一部 しι   第一章 正しい人 


   1 てんぷた氏

 1815年のこと、シャルル・フランソワ・ビヤンヴニュ・てんぷた氏は、ディーニュの司教だった。
 
 その真偽は別として、噂によれば、彼はフクロ高等貴族議会の議員の息子として生まれた。貴族といっても
並みの貴族ではなく、かなりの古い家柄で、代々法官の身分だった。シャルル・てんぷた氏の父は、当時の
習慣に従い、彼がまだ二十歳ともならぬうちに結婚させたが、てんぷた氏には放蕩癖があったのか、結婚後も
社交界での浮いた話は尽きなかったらしい。
 
小柄で風采は飄飄とし、才気に溢れ、粋で上品、文句の付けどころの無い好青年だった。奇形を思わせる
捩じれた耳や、鋭い目の下の大きな隈、時折見せる陰鬱な表情のために、一種の悪魔的魅力を漂わせ、
婦人連の好奇の的に、一部の青年貴族の羨望の的になっていた。

 だが、そんな彼も今や75歳の老人。かつての地位や名誉、財産はすべて失っていた。なるほど、今の彼には
司祭職と1万5千リーヴルという破格の年棒があるものの、慈善協会、孤児院、病院等に尽く寄付し、年に
1500ルーヴリしか手元に残らなかった。

 なぜ、以前は栄華を誇り、上流階級の頂点近くまでに上り詰めた一族の嫡子が、一介の司祭なぞになったのか? 
これまた真偽の知れぬ、一つの噂がある。


237 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/05/02(金) 16:57:26 ID:UHDLsL8Y
 1793年。山奥大革命。当時の人々の目に年はどう映ったことだろう。プギャ王家の恐怖政治に耐えかねた
民衆によるアルカモナズ監獄襲撃に始まり、繰り返される内乱とクーデター、それに伴う大量虐殺によって、
国内は混乱を極めた。プギャ16世の断頭台送りを皮切りに、ギロチンの嵐が吹き荒れることとなり、貴族という
貴族はプギャ派と見なされ首を失った。てんぷた家族についても例外ではなく、命からがら亡命できたのは
シャルル・てんぷた氏とその妻だけであった。しかし、妻は亡命直後、胸の持病で死んだ。

(てんぷた氏の姉は国内で絵師として身を隠し、後に彼と再会したが、この話については、今語ることもあるまい。)

 山奥陸軍元帥閣下のヒューポクライテ・クーデターにより、新政府が興るまで、てんぷた氏は国外から革命を見続けた。
「……何ですかこの狂態は?」に代表される山奥主義は強力な力を以てして、事態を収束させていったものの、
再び秩序が根付くには、5年の歳月が必要だった。

 てんぷた氏は、その動乱の中に何を見たのであろうか。誰もが目をそむけ、脳内あぼーんしたくなる光景の中に、
地位も財産も、家族さえも失った亡命者として。それは誰にも分からない。わかっていたことは、彼が祖国に帰ってきたとき、
すでに司祭になっていた、ということである。


 1804年には、リニョンの田舎町で司祭として引き籠って暮らしていた。

 ちょうど閣下の戴冠式のころ、ちょっとした削除依頼の件で、首都に出向いたことがあった。皇帝の甥にあたる
シナイ枢機卿に教区民のために請願したのである。その日、この司祭は、控室で待っていた。しばらくもすると、
客間の扉が開き、皇帝閣下が枢機卿とともに、司祭の前を通りかかった。閣下は、自分を物珍しそうに見つめている
老人に気が付き、振り返ってこう言った。

「私を見つめている老人は何者か?」

すると、てんぷた氏はこう答えた。

「閣下、閣下は一人の老人をご覧になり、私は一人の偉人に拝顔しているわけです。お互いのためになりますことでしょう」

皇帝はその晩、枢機卿から老人の名を聞きいた。そしてしばらく後に、この堂々とした老人はディーニュの司教に任命された。



238 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/05/02(金) 16:58:09 ID:UHDLsL8Y
 ネィティブ嬢は金髪で、まさに美人を絵にしたような人物だった。長い睫毛をしており、伏し目がちで、若いころの美貌を
まったく損なわずに歳をとったかの様だった。いつもかぶっているテン皮の帽子は、大革命以前の時代の唯一の名残であった。
テン皮のコートも持ってはいたが、聖職者の姉という身分上、着ることを控えていた。なんとも大人しい性格で、日がな一日、
庭で絵を描いては暮らしていた。
 
一方、ニャース夫人は、まだ若い、おっとりとした未亡人だった。家事をせかせかとよくこなし、また喘息持ちであったので、
お茶の時間以外はたいてい息を切らしていた。


 さて、赴任当日、てんぷた氏は、勅命で司教となったこともあり、ディーニュの有力者、ギコネコ旅団長の邸宅に招かれた。
着任式はそこで行われた。無論、知事、市長、市議長、地方軍官も出席して、である。

 正式に着任が済むと、司教の仕事が始まった。


239 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/05/02(金) 17:00:38 ID:UHDLsL8Y
237、238の間に張り忘れ。

 こうして、てんぷた氏は、姉のネィティブ嬢、女中のニャース夫人を伴って、ディーニュに赴任して来ることとなった。

240 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/05/05(月) 16:30:56 ID:wxgmdpAs
wktk

241 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/10/05(日) 19:15:38 ID:PjhMC05c
 2. 19年の徒刑を終えて

 褐色に錆びきった鉄門が砂埃を巻き上げて開いた。南仏の日差しに焼かれ、地中海の塩風に長年曝され続けたその門が開いたとき、
徒刑場から街道へと、門柱の間を熱風が走った。生臭い石灰の匂い。露天掘りの採掘場。足枷の鎖をじゃらつかせて鶴嘴を振るう徒刑
囚を獄吏が容赦なく鞭打つ。そんな光景を一瞬垣間見ることができたが、門はすぐに轟音と砂塵とともに閉じられてしまった。徒刑場から
門をくぐり出てきた男にとって、かつて自分を捕えていた地獄を振り返って眺め、感傷に沈む暇がないほど、門は素早く閉じられたのだった。
皮肉なことだ。19年の間俺を閉じ込め続けた堀と壁は、早く出て行けと言わんばかりにあっけなく俺を開放した。

 年は40歳前後の働き盛り、背丈は中背で頑丈そうな体つきをしていた。頭は短く刈られ、髭はぼうぼうに伸びていた。くたびれた様子の顔
つきだった。全体がみじめな印象を与えていた。ひさしのない鳥打帽には塩が吹き、胸がはだけた黒羅紗のシャツは擦り切れ、ズックのズボ
ンには穴が開いていた。皮の編み上げ靴、背嚢とそれに入った木綿の上着だけが新品だった。

 おめぇさんは人の二倍も力があったし、よく働いたからな、所長直々に支給品と支給金を余分にくれてやれとのご命令だとさ。ほら、渡すも
のは渡しただろ。さあ行けよ、二度と戻ってくるなよ、この化け物、犯罪者め。

242 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/10/05(日) 19:16:37 ID:PjhMC05c
 釈放するとき、典獄たちはそう言って背嚢を投げつけ、衛兵たちは刺叉と騎銃で男を門まで追いやった。官吏たちはたいてい、刑期を終え
た徒刑囚への支給の大部分を搾取し、仲間同士で横流ししていた。しかし彼らはこの男を恐れ、揉めた挙句、渡す金からわずかばかりの額
をくすねるだけにしようと決めた。彼らは単に、自分たちよりはるかにも屈強なこの男を怒らせる事を恐れたのではなかった。男の目を恐れ
ていた。不屈の精神を秘め、すべてを見透かすように輝く目。虎の目だ。静かに機会をうかがい、隙あらば敵に飛びかからんとする目。
殺人や強盗を働いて捕まった、徒刑場の中で最も凶悪な囚人たちでさえ、目を不気味がって男に近寄ろうとはしなかった。

                                        ◆



243 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/10/05(日) 19:17:27 ID:PjhMC05c

 太陽は中天に懸かかり、一片の酌量も持たずに街道を炙っていた。雲ひとつない空と赤茶けた大地が接する地平線、そのまた向こうにある
消失点を目がけて、街道はまっすぐに伸びていた。時々辻馬車が通り過ぎたが、人影はほとんどなかった。見渡す限り、月桂樹とコルク樫と名
もない灌木ばかりだった。風はなく、一歩踏み出すごとに汗が噴き出した。空から一帯を突き刺す光があまりにも強いため、灌木の影は地面に
ピンで固定されたようにくっきりと形を留めていた。赤土の上、ぴったりと張り付いた影と日向は、一片の曖昧さをも残すことのない明瞭な境界
を持ち、互いの領分から少しも出ようとはしなかった。石英が光を跳ね返す緋色と、黒々とした褐色の間に中間はなかった。

 汗にまみれた顔を上げ正面に目をやると、街道のはるか遠くに点在している家々が見えた。揺らめく陽炎を通すと遠くに蝿が舞っているように
しか見えなかった。歩きながら、じっと目を凝らして見ていると蠅が幾分増えたように思えた。蝿は少しずつ集まり形を取り始め、やがて一つの
黒い塊となった。騎馬だ。段々とはっきりしてきた。憲兵かもしれない。しかも二騎。

 男は一瞬ひやりとして足を止めた。二人連れの憲兵はギャロップで馬を駆ってやって来た。白昼夢の中の亡霊のように音もなく土煙も立てず、
恐るべき速さで近づいて来た。少なくとも男にとっては、彼らは灼熱の街道を通り過ぎる冷たく実態のない亡霊に過ぎなかった。なぜならば、憲兵
はかつて男にとって、彼を追い回し痛めつける法と刑罰の冷酷な手先ではあったが、刑期を終えた今の彼には興味すら持たぬ影であるはずだっ
たからだ。何のことはない。もはや恐れる理由はない、と男は再び歩を進めようとした。だが亡霊はすれ違いざまに実態のある、しっかりとした声で
叫んだ。そこの男、待て、と。

244 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/10/05(日) 19:18:47 ID:PjhMC05c
 ギャロップから停止へ急に移行したために、馬は後ろ足の蹄を土に食い込ませ、しばらく地面の上を滑った。激しく砂煙が巻きあがり、馬が不機嫌
そうに嘶いた。二人の憲兵が男を睨んでいた。一人は青白い顔に玉の汗を浮かべた青年で、もう一人の口髭を生やした方が上官らしかった。どこか
ただ事ならぬ様子だった。憲兵の徽章が胸に光っていた。

 やはり憲兵で間違いはない。なぜ俺を呼び止める? なぜ、馬が潰れてしまいかねないほどの速さで翔り来る?

 自分がいるはずのない場所に存在し、そこにあるはずもないものが存在するような感覚に襲われた。トゥーロン徒刑場の奥、石灰と腐った汚物の
匂いのする宿舎の中、冷たい石壁に囲まれた牢獄の中から手が伸びてきたような感覚。

 若い方が拍車の音を派手に立てて下馬した。上官は騎馬のままで眉ひとつ動かさない。

「旅券を出せ」

 若い方が言った。先ほど呼び止めたのもこの青年らしい。男は背嚢を下ろして口ひもを解き、シャツやラムの瓶や薄紙につつんだ堅パンをかき分
けて、大きな皮の財布を取り出した。札入れのリーヴル札の間から黄色い紙きれを取り出し、青年に渡した。旅券を受け取る時、青年は決して目を
合わせようとはしなかった。

「どうだ、違うか?」

 口髭の上官が、熱心に旅券を調べる青年に落ち着いた様子で尋ねた。顔には何の表情もない。

「違います」


245 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2008/10/05(日) 19:19:35 ID:PjhMC05c
 それだけ言い終わると、青年は一瞬にして馬に飛び乗った。上官はすでに馬を駆っていた。青年も馬の腹に蹴りを入れたが、そこで思い出した
ように、男に向けて旅券を投げてよこした。疾走を始める馬が起こす風が、埃とともに紙きれも巻きあげた。紙はゆっくりと空気を押し分け舞い上
がった後、ふわりと落ち始めた。街道に目をやると憲兵たちはすでに、遠くのゆれる蠅に戻っていた。陽炎の向こう側から一陣の風が吹き抜け、
旅券をさらに舞い上げた。

 この程度のことで怯えるなど俺も落ちたものだ。19年の徒刑が終わったというのに、寂寥感だけが募る。何が変わったか。何も変わってはいない。
いや、塀の中で多くを失くした。19年の空白は帰っては来ない。

 黄色い紙が地面に落ちた。男は紙を拾い上げ、薄いインクで書かれてかすれた文字を眺めた。トゥーロン徒刑場発行。19年の服役。4回の脱獄。
1815年八月‐‐日釈放。紙を裏返した。旅券番号一九四八、所有者ジャン・D・ラギ。

 旅券を財布に戻し、背嚢に入れた。それを再び背負う。知らぬ間に太陽は雲に隠れ、風は強くなっていた。もしかしたら一雨来るかもしれない。
まずは街道を北に向かう。今日中に、ディーニュの町に到着できるといいが。

246 :まふ:2008/12/02(火) 20:01:03 ID:PCvaPv96
お題「橋 悪魔 苦痛」


この先にある橋には悪魔が居る。

と、先ほど昼食を取った定食屋の恥というバンダナを付けた、おじさんが話してくれた。
軽い表情で、この町の言い伝えなんだと、教えてくれた。

僕はそれに興味を持った。
より深く知ろうと追加で善哉を頼み、話を促した。

何故、興味を持ったのかと言われたら、正直困る。
旅の途中、行く先も定まらず、目的あらずの僕にとって、面白そうだった。
それしかない。

話は簡単だった。
どこか遠い所へ連れて行かれるんだと。

要約すると、神隠しの類のものだ。

いつもなら、つまらないと鼻で笑ったのかもしれない。
けど、なんとなく、乗ってきたバイクを走らせていた。

目的に行く途中、コンクリートの道路は、土砂に変わり、土に変わる。
徐々に狭くなっていき、ちゃんと整地されてないのか、草木が生えており、
本当に自分は道を走ってるのか錯覚に陥る。

周りが暗くなった、まだ日は高いはずだ。

上を見上げると木々が多い茂っており、外部からまるで隔離されたかのように自分を包み込んでいた。
更にバイクを走らせていくと、やがて霧が出てくる。
最初は気にしないで済む程だったが、徐々に視界は白く深くなり、やがて、数十メートル前から先が見えなくなる。

これ以上進むのは危険か? 戻るべきか?
そう悩んだ時だった、看板を見つけたのは。

『この橋危険、渡るべからず』

僕は周囲を見渡した。


247 :まふ:2008/12/02(火) 20:01:34 ID:PCvaPv96

橋の入り口らしきものを発見した。

木と紐を見る限り、吊り橋だ。 それもかなり古い。

まあ、看板の忠告は正しそうだ。
この橋は渡るべきじゃないのだろう、きっと、おそらく。

だが、戻ろうにも、霧はかなり深くなっており、更にはあの獣道、
もはやバイクで走行するには不可能となっていた。

霧が薄まるまで待つかと、僕はバイクから降り、適当な木の側に座り込む。

暫く、霧が止む気配が無いために一服しようと、
ポケットからタバコを取り出し、口にくわえ、ライターで火をともす。
煙を胚に染み渡らせるように吸い込み、そして、ゆっくりと煙を出した。

「……──♪ ……──♪」

タバコを堪能していると歌声が聞こえた。
小さくて歌詞は聞き取れなかった、だが、誰かが歌っているように聞こえた。

僕はその声につられて立ち上がる。
そして、その声のする方へと足を運ぼうとする。

誰なのだろう?
誰が歌っているのだろう?

ただただ、流されるがままに、なんとなしに足を運ぶ。

「ぎゃあ!」

そこで何かが足に引っかかり、転んでしまった。
受け身も取らずに派手に転んだために全身に擦り傷が出来てしまった。
おかげで痛い。

そのまま、身体を丸めて、苦痛に耐える。

──ガサッ

誰かが来た。
地元の人なら道を案内してもらおうと思い、上半身を持ち上げる。
そして、片手を上げて、声を出す。

「あのー、すみませんがー」

その人は僕の横を通り過ぎた。
何の動作もなく、そして、僕の後ろを通り過ぎる。

無愛想な奴だなと思い、舌を打つ。
だからと言って、ほっとくと命の危険に関わる可能性もあるためにその人の後を追う。


248 :まふ:2008/12/02(火) 20:02:24 ID:PCvaPv96

ちょっと、待てと。

そっちの方は危ないぞと。

その橋は古……

男は僕には見向きもせずに橋を渡る。
吊り橋のきしむ音。
そして、二、三歩進んだかというところで音はしなくなる。

僕は橋に駆け寄った。
大丈夫かと叫んだ。
返事はない。

橋の先を見つめると、女性が居た。
歌って踊って手招きをする女性が。

「……──♪ ……──♪」

そう言えば、歌声、ずっと続いてたなぁと。

僕はすぐに霧の中、道を引き返した。
驚くほど早く、霧は消えて無くなった。
おそらく、ああいうことなのだろうと僕は思う。

橋から逃げている最中、お漏らしをした上に泣いて帰ったのは一生の内緒だ。

「ラギニャァァァーン!!」


後日、僕は前の定食屋で昼飯を食べるついでにその話を恥のおじさんに言った。

「そんな橋、しらねーぞ?」

「え、でも、だって、確かにラギは……」

「俺の言った橋は、ここをまっすぐ道沿いにだ。横道にそれて、山の中に進めとは言ってないぞ」

「…………」

<終わり>

249 :モツ煮:2008/12/02(火) 20:05:08 ID:En5fkm8E
 stにとって、その日は最高の夜になるはずだった。
 四畳一間のアパートを、それこそガムテープで陰毛一本に至るまでを除去するほどに掃除しまくったのも、この夜の為だ。
 クラスメートの又。そのむちむちな魅惑のボディ。今日まで何度、自家発電のお役に立っていただいた事だろう。
 その又が、今夜は自分の部屋に遊びに来てくれるのだ。
 今宵は、むちむち又で童貞を捨て、明日には会長の前で自慢しまくってやる。
 いやいや、それともそんなのは展開が速すぎるか? 手をつなぐ程度で良いか?
 来たら何しよう。ビデオでも見ようか。ムーディーな恋愛映画で気分を盛り上げるか、それともホラー映画で怖がらせて抱きついて貰うか・・・・
 色々と妄想を巡らせていると、ドアのチャイムが鳴り響いた。
 来たぞ! っと、思うが否や、stは狭い四畳一間を風のように走り抜け、あらかじめ鍵を開けてあったドアを開け放った。
 そこには想像通り又がいた。ちょっと寒いからか暖かなダウンジャケットなど着ているが、そんな物では隠しきれないボディラインがはっきり見えている。
 ああ、この柔らかく豊満な胸や、くびれたウェストや、大きなお尻が、今宵stの物となるのだ。そう考えると、stは思わず前屈みにならざるを得なかった。
 前屈みになると視線は下がり、又が持っているフクロに目がとまる。近所のスーパーの物だ。
 その視線に気づき、又はちょっと恥ずかしそうに笑った。
「ごめんね。ご飯まだなの。st君は」
「ああご飯か。そういえばまだだった」
 stは、緊張と興奮のあまり食事をとっていなかった事を思い出す。
 手料理だったら良かったが、それでも二人きりでの食事から始まるのは良い傾向だ。stは内心、好調な滑り出しを喜びながら、又を部屋の中に誘う。
「上がってよ。何買ってきたの?」
 四畳一間の中心に置かれたちゃぶ台。又はそこまで歩いてくると、フクロの中からまずパックを二つ取り出した。
 “白飯”
 しろめし。ご飯である。
 そして、又はあろう事か続けて物を取り出した。
「大好きなの」
 stは凍り付く。そこに有る物。それはstにとって、この世の悪夢が具現化した物であった。
 “納豆”
 何がダメなのだろう。関西人でもないのに。
 食わず嫌いだと言われた事もある。しかし、あれは視覚的にダメだった。
 給食で出た時、納豆のパックを前に給食後の休み時間から放課後まで座らされていた遠い記憶がよみがえる。
 給食を残しちゃいけないとはいえ、手付かずの納豆パックくらい、持ち帰らせてくれても良いじゃないか。おかんが喜んで食べるんだから。と思った苦い思い出だ。
 そんな過去に怯えるstの前で、又は納豆のパックをとり、発泡スチロールで出来たその白い容器を開けた。
 中に見える茶色い豆。
 この納豆は気が利いた部類に入る物らしく、芥子と納豆タレが同梱されている。
 又は、おぞましき茶色の豆の上に、冒涜的に黄色い芥子を垂らし、あろう事か濃茶色の納豆タレまでをもぶちまけた。
 ここまででstの体は嫌悪に震え、歯の根はあわず、嫌な汗が止まらない。ああ、あのおぞましき光景が、今、この自分の住む部屋の中で行われるのだ。
 又は嬉しそうに割り箸を割り、黄色と濃茶色に汚された茶色い豆にその箸を突き立てる。
 絶望の瞬間。
 全ての色が蠢く。どこから現れたかしれない、茶色の糸が豆の間をのたうち、箸に絡まってグチャグチャと歌い始める。
 もはや、stにとって限界であった。
「掻き回すなよ死ね」
 その言葉を言い終えた瞬間、又が浮かべた悲しみに彩られた表情をstは忘れなかっただろう。全てが終わったのだ。

 翌日、stは会長に、当分の間は変わらずお世話になる事と、部屋中にまき散らされた茶色の悪魔の掃除をして欲しい事をお願いする事となった。

250 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:36 ID:0B8U7vGE
どうやら本当らしい。
僕が布団の中でその結論を出したのはフクロ荘に来て十日目のことだった。

ミコネコさんが辿り着いた結論が本当であるかは分からない。
又さんと僕に嘘を吹き込んでいるかもしれない。
しかし、それが偽りであるとは思えなかった。

僕の薄弱な人生経験でもそう感じたのだ。
いや、薄弱だからそう感じたのかもしれないが…
とにかくそう感じたのだ。

決定的なのはハズカシさんの話だ。
彼がどれほどこのフクロ荘にいるのかは分からない。
しかしこの土地を知っているということを考えると、ある程度は過ごしているのだろう。
だとすれば、やはり彼はこの土地の人ということになる。
その土地の人が存在を知っているのであれば、やはりそれは本当だろう。

ミコネコさんも又さんもハズカシさんも僕をからかっていると思いたかった。
だが、その願望は願望でしかなく、現実は覆されなかった。

251 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:45 ID:0B8U7vGE
日時を示すぐらいしか役目を持たなくなった携帯電話は、
僕の不安な心とは無関係に「4:05」と無機質に時間を教えてくれた。
この結果は昨日から一睡もできず、”黒い噂”について考えたことによっている。

恐らく、いや確実に本当なのだろう。
文明化が進む場所と隔絶されたこの場所にはあってもおかしくない。
恐怖が僕を包み込んだ。

気が付くと空が明るかった。
布団から這いだし、窓から海を見る。
船が数艘見えた以外に何も変化はなかった。

道路に目をやると黒塗りの車が見えた。

252 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:10:57 ID:0B8U7vGE
同時に違和感が生まれた。
こんな時間に、こんな辺鄙な場所に、車が通るのはまずあり得ないことなのだ。
”黒い噂”のせいで疑心暗鬼になっているせいなのか、そう思った。

車は漁港近くに止まった。
この土地に用があるのだろうか。
ますます不安が煽られた。

静寂を打ち破り、電子音が響いた。
それは小さなものであったが、僕にとっては打ち破るような音であった。
音は僕の部屋からしているものではない。

畳の下だ。この下は1-3、arikiさんの部屋だ。
電子音は携帯電話の音だったようだ。
音は中途半端に途切れた。

253 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:06 ID:0B8U7vGE
部屋の中央に戻り、耳を澄ましてみた。
他人の話を聞くのは良くないことであることは知っている。
だが、とにかく不安を取り除きたいがためにしてしまった。

話を聞くことはできなかった。
arikiさんの声が聞くには小さすぎたのだ。
早朝であるから当然といえば当然である。

しばらくそのまま耳を澄ましていたが、突然ドアの開く音がした。
その音もarikiさんの部屋からであったのだろう。

254 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:19 ID:0B8U7vGE
来客なのだろうか、それとも外出なのだろうか。
疑問に思いつつしばらく考えを巡らしていると、窓から玄関の開く音がした。

そっと覗くとarikiさんの姿が見えた。
視線の先は坂を下り、道路を渡り、そして黒塗りの車の元へ辿り着いた。

arikiさんは車の助手席側に乗り込んだ。
車は発車することなく、そのままであった。

一体何が車の中で行われているのだろうか。
頭の中で”黒い噂”と関連した妄想がぐるぐると渦巻いた。

255 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:29 ID:0B8U7vGE
しばらくぼんやりと車を見ていたのがまずかったのだろうか。
突然arikiさんが助手席から降りた。
乱暴にドアは閉められ、僕の耳にもその音が届いた。

そして一瞬の後、彼の視線はフクロ荘の2-3号室に向いた。
まずい。と僕は思ったが、それは彼も同じだったようだ。
彼は恥ずかしそうに頭を撫でた。そしてこちらへ歩き始めた。

慌てて僕は窓から離れた。
窓からは車の離れる音がした。

256 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:46 ID:0B8U7vGE
彼はフクロ荘に戻ってくる。
車が去ったということで確定的になったその事項は僕を震え上がらせた。
ただ、彼がフクロ荘に戻ってくるということが重圧に感じた。

”黒い噂”のせいで疑心暗鬼になっている僕には、
ちょっとした非日常の出来事が、恐ろしく感じていたのだ。

携帯電話は変わらず無機質に時を重ねている。
それと同時に僕の心の圧迫も重い物となっていった。

刻一刻、刻一刻と迫ってくるその時まで自分は何をすることもできなかった。

257 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:11:55 ID:0B8U7vGE
「nt君。いるかい」

その声はドアの向こうからした。
arikiさんだった。
返答に詰まったが答えない訳にはいかない。

「あ、はい…」
「ちょっと話があるんだ。開けてくれないか。」

いつものarikiさんの声ではあるが、どことなく畏まっている。
何かあるのだろう。
何も聞かず不安になるよりは、正体を見極めた方がいいだろうと思い、ドアを開けた。

258 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:07 ID:0B8U7vGE
「どうも。いやぁ、まずいところを見られちゃったね」
「…何かあったんですか?」
「ん…まぁ、ね。ちょっと長い話になるがちょっと上がらせて貰っていいかい」
「はい」

机を挟んで僕とarikiさんは対面した。

「もう気が付いているかもしれないが…」

arikiさんはそう話し始めた。
僕はドキリとしたが顔には出さないようにした。

259 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:28 ID:0B8U7vGE
「俺は元々はバスの運転手でなく、漁師をやっていたんだ。しばらく前まではな」
「はぁ」
「ところがある時”葦富賂株式会社”からこの土地の買収の話が持ち上がったんだ」
「それが何か関係しているんですか?」

葦富賂株式会社は様々な分野に手を広げ、近頃飛躍を遂げている企業だ。
賄賂であるとか汚職であるとかそういう言葉が付きまとう企業でもあるのだが。

「あぁ、だがその理由は話の先の方になる。
 で、それっていうのはこの土地を買収して、ここ一帯を大型リゾート地にするという計画だ」
「…」

確かにここの海は綺麗だし、そういった計画が起きても不思議ではない気がする。

「だがそんなことをしたら、ここの住人は住む場所をなくしてしまう。
 だから俺たちは反対運動を行ったんだ。だが、あいつらは酷い手段を使いやがった」
「酷い手段…ですか?」
「あぁ。ヤクザを送り込んで嫌がらせに来やがった
 店は荒らされ、家はガラスが割られ、当然ここも暴力被害にあった」
「警察は何もしてくれなかったんですか?」
「何もしてくれなかったさ。葦富賂株式会社は警察の上部とも繋がりを持っているらしい」

260 :十日目 ◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:43 ID:0B8U7vGE
「でも、今はそんなことが起こっていませんよね」
「あぁ、それが今俺がバスの運転手をやっている理由に繋がってくる。
 俺はその計画を担当していた社員にまとまった金を渡した。
 それで計画を立ち消えにさせたのさ」
「…」
「卑怯な奴らには卑怯な手段がお似合いさ」

自嘲気味にarikiさんは笑った。
その笑いには寂しさが含まれているように感じた。

「でもそんな金がどこにあったんですか?」
「漁船を売っ払ったのさ。やや古いもんではあったが手入れは欠かさなかったからな。
 それなりの値で売れたよ。」
「そこまでして…」
「ここの住人にはここしか住む場所がないのさ。
 それで俺はバスの運転手をやりはじめたんだ」
「はぁ…でもいきなりどうしてそんな話を?」
「…あの社員が今日の早朝、俺に連絡してきたのさ。
 『計画がまた立ち上がった。話をして欲しければ漁港まで来い』とな…」

消えゆくような声でarikiさんはそう話した。

261 :◆VV.HtNrxUA :2009/02/23(月) 21:12:55 ID:0B8U7vGE
ここまで

262 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2009/02/24(火) 12:39:16 ID:UuDDW7vo
おやレスがたくさんついているなと思ったらなんですか(ry
久しぶりすぎてまた最初から読み直してしまった件

263 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2009/07/22(水) 08:29:23 ID:b0HqCZH2
(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')(' -')
(' -')http://www15.atwiki.jp/fukurofantasy/(' -')
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